前提
ディーラーと1対1で、21を超えずに勝つ
同じテーブルに何人座っていても、勝負は常に「自分 対 ディーラー」。隣のプレイヤーとは競っていない。ディーラーには裁量がなく、17以上になるまで引き続けるという固定手順しかない。だからこの手順を前提に、こちらの選択だけを最適化できる。それが基本戦略の正体。
カードの数え方
- 2 〜 10
- 数字どおり。
- J / Q / K
- すべて 10。デッキの13種のうち4種が10なので、約31%(4/13)が10札。
- A(エース)
- 1 または 11 のうち、その時点で有利な方。21を超えるなら自動的に 1 として扱われる。
- スーツ
- ブラックジャックでは一切意味を持たない。ハートもスペードも同じ。
- ハードハンド
- Aを含まない、またはAを11として使えない手。例: 10+6 = ハード16。A+5+9 = ハード15(Aを11にすると25でバーストするため)。
- ソフトハンド
- Aを11として数えられる手。1枚引いてもバーストしないのが最大の特徴。例: A+6 = ソフト17。
- ブラックジャック
- 最初の2枚が A + 10札。合計21だが「21」とは別格で、3:2 の配当がつく。スプリット後にできた A+10 はブラックジャック扱いにならない(ただの21)。
1ハンドの進行
手順
- ベットを置く。カードが配られる前にベッティングサークルへチップを置く。以降このハンド中は元のベット額を減らせない。
- 配札。プレイヤーに2枚(表向き)、ディーラーに2枚。ディーラーの1枚は表(アップカード)、1枚は裏(ホールカード)。
- ブラックジャックのチェック。ディーラーのアップカードが A または 10札のとき、ホールカードを覗いて(ピーク)ブラックジャックかどうかを確認する。A のときはこの前にインシュランスの募集が入る。ブラックジャックなら即座に全員の負けが確定(プレイヤーもブラックジャックならプッシュ)。
- プレイヤーのアクション。ディーラーから見て左端(ファーストベース)から順に、ヒット/スタンド/ダブル/スプリット/サレンダーを選ぶ。21を超えた時点でバースト=ディーラーの手を見る前に負けが確定する。
- ディーラーのプレー。ホールカードを開き、16以下なら必ず引く/17以上なら必ず止まる。判断は一切入らない。ソフト17(A+6)を引くか止まるかは台のルール次第(S17 / H17)。
- 精算。ディーラーがバーストすれば、残っている全員の勝ち。バーストしなければ合計を比較して高い方の勝ち。同点はプッシュ(引き分け=ベット返却)。
プレイヤーの選択肢
使える手は6つだけ
| アクション | 内容 | 条件・注意 |
|---|---|---|
| ヒット Hit | カードを1枚引く。21を超えるまで何度でも。 | 21を超えた瞬間にバースト。ディーラーの手番を待たずに負け。 |
| スタンド Stand | 引くのをやめて手番を終える。 | — |
| ダブルダウン Double Down | ベットを倍にして、ちょうど1枚だけ引いて手番終了。 | 最初の2枚のときのみ。多くの台はどの2枚でも可(Double on Any 2)だが、9〜11のみ・10〜11のみに制限する台もある。スプリット後にダブルできるかは DAS ルール次第。 |
| スプリット Split | 同じ数字のペアを2つのハンドに分け、同額を追加ベットして両方をプレーする。 | 通常3回まで(=最大4ハンド)。Aのスプリットは各1枚ずつしか引けず、追加ヒット不可の台がほとんど。A分割後の A+10 はブラックジャック扱いにならない。10とKなど「どちらも10」を分けられるかは台次第。 |
| サレンダー Surrender | 降りてベットの半額を返してもらう。 | 採用していない台も多い。通常は「レイトサレンダー」=ディーラーのBJチェック後にのみ可能。最初の2枚のときだけ。使える場面は年に数えるほど少ないが、使うべき場面では確実に得。 |
| インシュランス Insurance | ディーラーのアップカードがAのとき、元ベットの半額までを「ディーラーがBJである」方に賭ける。当たれば2:1。 | 原則として取らない。カウントしていない限り常に不利(詳細は「確率と期待値」)。自分がBJのときに提案される「イーブンマネー」も中身は同じ賭けなので同様に断る。 |
用語
テーブルで飛び交う言葉
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| アップカード | ディーラーの表向きのカード。プレイヤーの全判断はこの1枚を軸に決まる。 |
| ホールカード | ディーラーの裏向きのカード。 |
| シュー | 複数デッキをまとめて入れる配札用の箱。4〜8デッキが一般的。 |
| ピッチゲーム | 1〜2デッキを手で配る形式。プレイヤーがカードに触れてよい台が多い。 |
| カットカード | シューに差し込まれた色付きの板。これが出たらそのラウンド終了後にシャッフル。 |
| ペネトレーション | シャッフルまでに使われるカードの割合。75%なら6デッキ中4.5デッキが消化される。カウンティングの成否を左右する最重要要素。 |
| ファーストベース | ディーラーから見て左端=最初にアクションする席。 |
| サードベース | ディーラーから見て右端=最後にアクションする席。 |
| S17 / H17 | ディーラーがソフト17(A+6)でスタンドするか(Stand)、ヒットするか(Hit)。プレイヤーにとってS17が有利。 |
| DAS | Double After Split。スプリットした後のハンドでダブルできるルール。プレイヤーに有利。 |
| RSA | Re-Split Aces。分けたAをさらに分けられるルール。プレイヤーに有利。 |
| CSM | Continuous Shuffling Machine。毎ラウンド戻して混ぜ続ける機械。カウンティングが完全に無効になる。 |
| ノーホールカード | ディーラーが最初に1枚しか取らない方式(欧州系に多い)。ダブル/スプリット後にディーラーBJが判明すると追加分まで失う台がある(下記OBOでなければ不利)。 |
| OBO | Original Bets Only。ノーホールカード台で、ディーラーBJのとき失うのは元ベットだけというルール。実質的にホールカードありと同等。 |
| トーク(トウク) | ディーラーへのチップ。自分のベットの手前に置いて「一緒に賭ける」形が一般的。 |
| ヒート | カジノ側からの警戒・監視。 |
最初の意思決定
どう打つかより、どこに座るか
基本戦略を完璧に覚えても取り返せる差はせいぜい 0.5% 程度。ところが「ブラックジャックが 3:2 か 6:5 か」だけで 1.4% 動く。つまり台選びを間違えた時点で、戦略の努力は全部帳消しになる。座る前に見るべきものは決まっている。
チェック順
座る前に確認する5項目
- ブラックジャックの配当 — 3:2 であること。6:5 や 1:1 は論外。ここだけは妥協しない。
- ディーラーのソフト17 — テーブルに「Dealer must stand on all 17s」(S17)とあれば良い台。「Dealer hits soft 17」(H17)なら 0.22% 不利。
- デッキ数 — 少ないほど有利。ただし少デッキ台は 6:5 とセットになっていることが多いので、必ず1と併せて見る。
- ダブルとスプリットの自由度 — 「どの2枚でもダブル可」「DAS可」「Aのリスプリット可」が揃っているほど良い。
- サレンダーの有無 — あれば +0.08%。小さいが無料でもらえる。
この他、カウンティングをするならペネトレーション(カットカードの深さ)とCSMの有無が最重要。CSM台はカウントが原理的に成立しない。
数値
ルールごとの期待値への影響
6デッキ・S17・DAS可・BJ 3:2・基本戦略を基準(ハウスエッジ 約0.45%)としたときの、各ルールの増減。プラスはプレイヤー有利、マイナスは不利。値は概算で、他ルールとの組み合わせで多少変動する。
| ルール | 影響 | コメント |
|---|---|---|
| ブラックジャックが 6:5 | −1.39% | 単独で他のすべてを打ち消す。回避一択。 |
| ブラックジャックが 1:1 | −2.27% | もはや別ゲーム。 |
| ディーラーが H17 | −0.22% | マカオ・韓国・シンガポール等で標準的。 |
| ダブルが 9〜11 のみ | −0.09% | ソフトハンドのダブルが封じられる。 |
| ダブルが 10〜11 のみ | −0.18% | — |
| DAS 不可 | −0.14% | ペアの戦略が数箇所変わる。 |
| スプリットが1回まで | −0.10% | — |
| 8デッキ → 6デッキ | +0.02% | — |
| 8デッキ → 2デッキ | +0.19% | — |
| 8デッキ → 1デッキ | +0.48% | ただし1デッキ台はほぼ 6:5。 |
| レイトサレンダー可 | +0.08% | — |
| アーリーサレンダー可 | +0.6% | 現代ではほぼ絶滅。 |
| A のリスプリット可 | +0.08% | — |
| A スプリット後にヒット可 | +0.19% | 珍しい好条件。 |
| 5枚チャーリー(5枚で自動勝ち) | +1.46% | まず見かけない。あれば座る価値あり。 |
組み合わせ
実在しやすい3タイプの台
良い台
6デッキ / S17 / DAS / LS / 3:2
100回×1,000円ベットで理論損失 約400円。ラスベガスのストリップ高ミニマム卓やダウンタウンに残っている水準。
標準的な台
8デッキ / H17 / DAS / サレンダー無 / 3:2
アジア圏のカジノで最もよく見る条件。基本戦略を守れば十分に遊べる範囲。
避ける台
6デッキ / H17 / 6:5
低ミニマム卓に多い形。損失ペースは良い台の5倍。ミニマムが安くても座らない方が結果的に安い。
基本戦略
自分の手 × ディーラーのアップカードで一意に決まる
基本戦略とは「この状況で最も損の少ない選択」をすべて計算し尽くした表のこと。直感や流れは一切関係なく、同じ状況なら常に同じ答えになる。以下は 4〜8デッキ・DAS可・レイトサレンダー可・Aスプリット後は各1枚 を前提とした表。
ハードハンド
ソフトハンド(Aを11として使える手)
ペア(スプリットの判断)
ペアの表で「スプリットしない」と出た場合は、その合計をハード表(またはソフト表)で引き直す。例: 7,7 対 8 は「H」=ハード14として扱いヒット。
凡例
角に三角のあるマスは、S17 と H17 で答えが変わる箇所。上のトグルで切り替わる。
差分
H17 で変わるのは6箇所だけ
| 状況 | S17 | H17 | 理由 |
|---|---|---|---|
| ハード11 対 A | ヒット | ダブル | H17ではディーラーのAが強くなりすぎるため、勝ちに行くよりベットを厚くする価値が上回る。 |
| ソフト18(A,7)対 2 | スタンド | ダブル | ディーラーがソフト17から引き直す分だけバーストしやすくなる。 |
| ソフト19(A,8)対 6 | スタンド | ダブル | 同上。6に対する優位が最も広がるハンド。 |
| ハード15 対 A | ヒット | サレンダー | Aの強さが増し、勝率が半額返還を下回る。 |
| ハード17 対 A | スタンド | サレンダー | H17のAに対する17は期待値が −0.5 を割り込む。 |
| 8,8 対 A | スプリット | サレンダー | 分けた2つのハンドの合計期待値が半額返還より悪くなる。サレンダー不可ならスプリット。 |
ハード16 対 A のサレンダーは S17・H17 どちらでも同じ(サレンダー)。
記憶
覚える順番
上から順に、覚えた分だけ効果が出る並びにしてある。1〜4 だけでハウスエッジの大半は回収できる。
- 17以上は必ずスタンド。ハード17以上は例外なし(サレンダーが使える台のH17・対Aだけが例外)。
- ディーラーが 2〜6 なら 12〜16 でスタンド。ただし 12 対 2 と 12 対 3 だけはヒット。この2マスが唯一の例外で、間違えやすい。
- ディーラーが 7〜A なら 12〜16 はヒット。バーストが怖くても引く。止まっても負けるだけだから。
- A,A と 8,8 は常にスプリット。10,10 と 5,5 は絶対にスプリットしない。ここは無条件で覚える。
- 11 は常にダブル(S17でAが相手のときだけヒット)。10 は 2〜9 に対してダブル。
- ソフト17(A,6)以下では絶対にスタンドしない。引いてもバーストしないので、止まる理由がない。
- ソフト18(A,7)は「9・10・A に対してはヒット」。18で止まりたくなるが、ここが最も損をしやすい判断。
- 最後にソフトハンドのダブル範囲と、細かいペアの分岐を詰める。
条件が違う台では
表を使うときの読み替え
DAS が無い台
- 2,2 と 3,3 対 2・3 → スプリットせずヒット
- 4,4 → どこでもスプリットしない(ヒット)
- 6,6 対 2 → スプリットせずヒット
サレンダーが無い台
- R(サレンダー)のマスはすべて代替アクションに読み替える。凡例の Rh=ヒット、Rs=スタンド、Rp=スプリット。
- つまり 16 対 9・10・A はヒット、15 対 10 はヒット。
1〜2デッキの台
- この表とは十数箇所ずれる(8,8 対 10 のサレンダー、11 対 A のダブル、ソフトダブルの範囲など)。
- 少デッキ台に座るなら専用表を用意する。多デッキ表の流用は 0.1% 前後の追加損失になる。
ノーホールカード台(OBOでない)
- ディーラーが 10 または A のとき、ダブル・スプリットで追加した分まで失う可能性がある。
- 対 A・対 10 でのダブルとスプリットを控えめにする(11 対 10 はヒット、8,8 対 10・A はヒット等)。
根拠
なぜその表になるのか
基本戦略の各マスは「その選択をしたときの期待値」を全パターン計算して、最大のものを選んだ結果。勝率ではなく期待値で決まっていることが重要で、だから「勝率が低くてもこちらが正解」という手が普通に出てくる。
出発点
ディーラーのバースト率(アップカード別)
6デッキ・S17・ディーラーがブラックジャックをチェックする台での概算値。この分布が基本戦略のほぼすべてを説明する — 2〜6 に対しては「引かずに待つ」、7〜A に対しては「自分で作りにいく」。7 と 6 の間の段差(約16ポイント)が、12〜16 の判断が真っ二つに割れる理由。
なぜ 16 対 10 はヒットなのか
スタンドすると、ディーラーが 10 でバーストする確率は約 21%。つまり 約79%負ける。ヒットすると自分のバースト確率は約 62% だが、生き残った 38% のうちかなりが勝つ。計算すると期待値は スタンド −0.54 に対し ヒット −0.51。どちらも大きく負けるが、ヒットの方が損が小さい。サレンダーが使えるなら −0.50 で確定するのでそちらが最善。
なぜ 12 対 2 はヒットで、12 対 4 はスタンドなのか
12 でヒットしてバーストするのは 10札を引いたときだけ(約31%)。一方ディーラーの 2 はバースト率が 35% しかなく、待っても足りない。4 になるとバースト率が 40% まで上がり、待つ方が有利になる。12 だけは 2・3 に対してヒットという例外はここから来ている。13以上はバースト確率が上がるので 2 から待ちに転じる。
なぜ A,7(ソフト18)で 9・10・A に引くのか
18 は強そうに見えるが、ディーラーが 9・10・A で作る手の中央値は 19〜20。18 でスタンドすると期待値はマイナス。ソフトなので引いてもバーストせず、改善の余地しかない。「良さそうな手だから止める」は最も高くつく直感。
なぜ 8,8 を 10 に対しても分けるのか
16 のまま戦うのは最悪のハンド(期待値 −0.54)。8 から2つ作り直せば、1ハンドあたりの期待値は −0.48 程度まで改善する。「負けを増やしに行く」ように見えて、実際は損失を減らす手。サレンダー(−0.50 で確定)と比べても −0.48 の方が良いので、8,8 対 10 はサレンダーせずスプリットが正解。H17 で対 A のときだけ、この関係が逆転してサレンダーになる。
インシュランス
「保険」ではなく、単体で不利な別ゲーム
ディーラーのアップカードが A のとき、ホールカードが 10札ならインシュランスは 2:1 で当たる。つまり 残りのカードの 1/3 超が10札なら得、それ未満なら損。
| 条件 | 10札の割合 | インシュランスの期待値 |
|---|---|---|
| 損益分岐点 | 33.3% | 0 |
| 通常のデッキ構成 | 30.8%(4/13) | −7.7% |
| Hi-Lo のトゥルーカウント +3 以上 | 33.3% 超 | プラス |
結論: カウントしていないなら常に断る。自分がブラックジャックのときに提案される「イーブンマネー」(1:1で確定精算)も、数式上はインシュランスを取るのと完全に同一。3:2 を捨てて 1:1 を取る行為なので、同じく断る。カウントしている場合のみ、トゥルーカウント +3 以上で取る(インデックスプレイの中で最も価値が高い1手)。
誤解
よくある間違い
| よく言われること | 実際 |
|---|---|
| サードベースの人が下手だと全員が負ける | 長期的には無関係。カードの並びを変えるだけで、他人のプレーが自分の期待値に与える影響はゼロに収束する。「あの人が引いたせいで」は結果論。 |
| ディーラーのホールカードは10だと思え | 10札は 13種のうち4種、約31%。「10だと仮定する」は目安として便利だが、確率としては誤り。基本戦略はすでに正しい分布で計算されている。 |
| バーストしそうだから引かない | 12〜16 対 7〜A は、引く方が損失が小さい。「バーストしたくない」という感覚が最大の損失源。 |
| 負けが込んだら倍賭けすれば取り返せる(マーチンゲール) | テーブルリミットと資金の上限で必ず止まる。1回の破滅的な連敗ですべてを失う形に変換しているだけで、期待値は1ミリも改善しない。 |
| ホットなテーブル/流れが来ている | シャッフル後の各ハンドは独立。唯一の例外がカウンティングで、これは「流れ」ではなく残りカードの構成という実体のある情報。 |
| 勝っているうちにやめれば勝てる | やめ時は総期待値に影響しない。各ハンドの期待値がマイナスなら、プレー回数を減らすことだけが損失を減らす(=そもそもやらない、が最善という結論になる)。 |
| 20でスプリットして稼ぐ | 10,10 の期待値は +0.64 で全ハンド中トップクラス。分けると 2ハンドとも +0.5 前後に落ちる。勝っている手を壊す典型。 |
| ディーラーもバーストするから五分 | プレイヤーが先にバーストして負けが確定する非対称性があるため、五分にはならない。両者バーストの約8%がまるごとハウスの取り分。 |
位置づけ
ストレートもフラッシュも、本体のルールではない
ブラックジャック本体に「役」の概念はない。合計が21を超えずにディーラーより高ければ勝ち、それだけ。ストレート・フラッシュ・スリーカードが出てくるのは サイドベット——本体とは別枠で、手前の別サークルに置く追加の賭けのこと。その代表が 21+3 で、これがポーカーの役を使う。
本命
21+3 — ストレート・フラッシュが出てくる賭け
名前の意味は「ブラックジャック(21)+ 3枚ポーカー」。自分の最初の2枚と、ディーラーのアップカード1枚、合わせて3枚で3カードポーカーの役を作る。ディーラーのホールカードも、その後に引くカードも一切関係ない。配られた瞬間に勝敗が決まる。
役の一覧(強い順)
- スーテッドスリーカード
- 同じランク3枚が全部同じスート。例: ♠K ♠K ♠K。デッキが複数だから成立する。
- ストレートフラッシュ
- 連続する3ランクが全部同じスート。例: ♥8 ♥9 ♥10。
- スリーカード
- 同じランク3枚。スートは不問。例: ♠7 ♦7 ♣7。
- ストレート
- 連続する3ランク。スートは不問。例: ♠5 ♦6 ♥7。A は上下どちらにも使えるので A-2-3 も Q-K-A も成立する。
- フラッシュ
- 3枚が同じスート。ランクは不問。例: ♦2 ♦9 ♦K。
ストレートがフラッシュより強いのが5枚ポーカーとの違い。3枚だけだと同スートを揃えるより連番を揃える方が難しいため、順位が逆転する。配当も必ずストレート > フラッシュになっている。
最重要
同じ「21+3」でも版によって4倍不利になる
21+3 は配当表が何種類も流通していて、テーブルの表示を見ないと自分がどれを打っているか分からない。ハウスエッジは最良 3.24% から最悪 13.39% まで開く。数値は Wizard of Odds の解析による。
| 版 | ハウス エッジ | デッキ | スーテッド 3カード | ストレート フラッシュ | 3カード | ストレート | フラッシュ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 原型(全役一律) | 3.24% | 6 | — | 9:1 | 9:1 | 9:1 | 9:1 |
| 現行の標準的な版 | 3.70% | 6 | 100:1 | 40:1 | 30:1 | 10:1 | 5:1 |
| SF35・トリップス33 | 4.14% | 6 | 100:1 | 35:1 | 33:1 | 10:1 | 5:1 |
| スリーカード25の版 | 6.29% | 7 | 100:1 | 40:1 | 25:1 | 10:1 | 5:1 |
| 21+3 Xtreme | 13.39% | 6 | — | 30:1 | 20:1 | 10:1 | 5:1 |
全体像
種類は60を超える。だが構造は4系統しかない
Wizard of Odds が解析しているものだけで 64種類。カジノごとの独自版まで含めればさらに増える。ただし「何枚のどのカードで勝敗が決まるか」で分類すると4つしかない。この4系統さえ掴めば、名前を知らないサイドベットに出会っても構造は読める。
| 系統 | 判定に使うカード | 代表例 | 性質 |
|---|---|---|---|
| A. 自分の2枚型 | 自分の最初の2枚だけ | パーフェクトペア/ロイヤルマッチ/スート・エム・アップ/ラッキーレディース/オーバー・アンダー13 | 最も種類が多い。ディーラーは無関係で、配られた瞬間に確定する。 |
| B. 3枚型 | 自分の2枚+ディーラーのアップカード | 21+3/ラッキーラッキー/マッチ・ザ・ディーラー/Hot 3/Tri Lux | 役や合計を作る。ホールカードは使わない。これも配られた瞬間に確定。 |
| C. ディーラーの結末型 | ディーラーの最終的な手 | バスターブラックジャック/バストボーナス/EZ Bust/インシュランス | ハンドが終わるまで結果が出ない。自分の手とは独立。 |
| D. 展開型 | 3枚目以降・連勝・累積 | スーパーセブン/Streak/House Money/Blazing 7's/プログレッシブ | 高額配当を謳うものが多く、その分ハウスエッジも重い傾向。 |
A と B は配られた瞬間に勝敗が決まるため、本体のプレー判断(ヒットするか等)に一切影響されない。逆に言えば、サイドベットを置いたからといって本体の打ち方を変える理由はない。
個別
テーブルでよく見る顔ぶれ
パーフェクトペア
自分の最初の2枚がペアかどうかに賭ける。ディーラーは無関係。
- パーフェクトペア — ランクもスートも完全一致(♠A と ♠A)
- カラードペア — 同ランク・同色だが別スート(♠A と ♣A)
- ミックスペア — 同ランク・色違い(♠A と ♥A)
配当は 25:1 / 15:1 / 5:1 あたりが標準で、8デッキのハウスエッジは版により 2.17%〜7.95%。Evolution 系のライブカジノ版は 8.05% 以上と重い。デッキ数が少ないと極端に不利になる(2デッキで48%という版もある)。
ラッキーラッキー
21+3 と同じ3枚(自分2枚+アップカード)だが、役ではなく合計で判定する。
- スーテッド 7-7-7 → 200:1
- スーテッド 6-7-8 → 100:1
- 7-7-7(スート不問)→ 50:1
- 6-7-8(スート不問)→ 30:1
- 合計21・同スート → 15:1/不問 → 3:1
- 合計20 → 2:1/合計19 → 2:1
6デッキ・この配当表でハウスエッジ 2.66%。主要サイドベットの中では最も軽い部類。版によっては 12.60% まで悪化する。
バスターブラックジャック
ディーラーがバーストするかに賭ける。バーストに使った枚数が多いほど高配当。
- 8枚以上 → 250:1
- 7枚 → 50:1/6枚 → 15:1
- 5枚 → 4:1/3〜4枚 → 2:1
6デッキ・H17 でハウスエッジ 6.21%。ディーラーのバースト率は約28%あるので当たりやすく感じるが、その大半は2:1の最低配当。
ロイヤルマッチ
自分の最初の2枚が同スートかどうか。フラッシュ系の最も単純な形。
- ロイヤルマッチ — 同スートの K と Q
- イージーマッチ — 同スートの任意の2枚
25:1 / 2.5:1 の版は6デッキで 6.67% と重い。一方 10:1 / 3:1 の版は多デッキだと理論上プレイヤー有利(6デッキで −1.11%)という珍しい例。ただしこの版はまず置かれていない。
スート・エム・アップ
自分の2枚が同スートなら勝ち。ランクの組み合わせで配当が変わる。
- 同スートのA2枚 → 60:1
- 同スートのブラックジャック → 10:1
- 同スートのペア → 5:1/同スートで合計11 → 3:1
- その他の同スート → 2:1
8デッキで 2.67%、6デッキで 3.41%。サイドベットの中では最も軽い部類。2デッキだと 9.41% まで悪化するので、シューゲーム専用と考えてよい。
マッチ・ザ・ディーラー
自分の2枚のどちらかが、ディーラーのアップカードと同じランクなら勝ち。2枚とも一致・スートまで一致だと配当が上がる。
- 6デッキ: スート一致 11:1/ランクのみ 4:1
- 8デッキ: スート一致 14:1/ランクのみ 3:1
ハウスエッジは 3.31%(2デッキ)〜4.84%(4デッキ)。デッキ数と配当表が連動して設定されているため、他のサイドベットのような「デッキが多いほど有利」という単純な関係にならない。
オーバー/アンダー13
自分の最初の2枚の合計が13より上か下かに賭ける。Aは常に1点。ちょうど13はどちらの賭けも負け——ここが胴元の取り分。
- どちらも配当は 1:1(イーブンマネー)
- オーバー13 → ハウスエッジ 6.55%(6デッキ)
- アンダー13 → ハウスエッジ 10.07%(6デッキ)
1980年代からある最古級のサイドベット。カウンティングに極端に弱く、それが理由でほとんどのカジノから消えた。詳細は下の「カウンティングとサイドベット」を参照。
ラッキーレディース
自分の最初の2枚の合計が20なら勝ち。クイーンのペア、とくにハートのQのペアが最高配当。
- ♥Qペア + ディーラーがブラックジャック → 1000:1
- ♥Qペア → 200:1
- ランクもスートも一致の20 → 25:1
- 同スートの20 → 10:1/不問の20 → 4:1
6デッキでハウスエッジ 17.64%。1000:1 の見出しが目を引くが、主要サイドベットの中で最悪の部類。20は作りやすいのに配当が4:1しかないのが効いている。
スーパーセブン
自分の最初の3枚で7を集める。1枚目が7の時点で当たり。
- 同スートの 7-7-7 → 5000:1
- 7-7-7 → 500:1
- 同スートの 7-7 → 100:1/7-7 → 50:1
- 7が1枚 → 3:1
6デッキで 11.40%(3枚目が保証される版)。5000:1 という数字はサイドベット全体でも最大級だが、ハウスエッジもそれに見合って重い。最高配当の派手さと不利さは概ね比例する。
一覧
不利さの順に並べる
主要サイドベットをハウスエッジの軽い順に。同じ賭けでも配当表の版とデッキ数で大きく動くため、代表値と幅の両方を示した。数値は Wizard of Odds の解析による。
| 系統 | 賭け | 何で決まるか | 代表値 | 版・デッキによる幅 |
|---|---|---|---|---|
| — | 本体(基本戦略・良条件) | 自分の判断とテーブルのルール | 0.4% | 0.4〜1.8% |
| A | パーフェクトペア | 自分2枚がペアか | 2.17% | 2.17〜13.03% |
| B | ラッキーラッキー | 3枚の合計が19/20/21 | 2.66% | 2.66〜12.60% |
| A | スート・エム・アップ | 自分2枚が同スート | 2.67% | 2.67〜10.16% |
| B | 21+3 | 3枚ポーカーの役 | 3.24% | 3.24〜13.39% |
| B | マッチ・ザ・ディーラー | 自分の札がアップカードと同ランク | 3.31% | 3.31〜4.84% |
| C | バスターブラックジャック | ディーラーのバースト枚数 | 6.17% | 6.17〜6.89% |
| A | オーバー13 | 自分2枚の合計が13超 | 6.55% | 6.54〜6.79% |
| A | ロイヤルマッチ | 自分2枚が同スート/KQ | 6.67% | 6.46〜10.86% |
| C | インシュランス | ホールカードが10札か | 7.40% | 6デッキ・カウント無し |
| A | アンダー13 | 自分2枚の合計が13未満 | 10.07% | 10.06〜10.11% |
| D | スーパーセブン | 最初の3枚で7を集める | 11.40% | 9.01〜16.97% |
| A | ラッキーレディース | 自分2枚の合計が20 | 17.64% | 16.73〜24.94% |
系統の A〜D は上の分類表に対応。インシュランスの計算は 04 確率と期待値 を参照。最も軽いサイドベットでも本体の5倍以上不利である点は変わらない。
判断
初めて見るサイドベットの読み方
64種類すべてを覚える必要はない。数値を知らない賭けに出会ったとき、テーブルの表示だけで当たりをつける手がかりが3つある。
- 最高配当が派手なほど不利。1000:1 のラッキーレディースは17.64%、5000:1 のスーパーセブンは11.40%。一方、最高配当が 60:1 のスート・エム・アップは2.67%。宣伝文句になっている数字が大きいほど、そこに金が寄せられて他が薄くなっている。
- 「作りやすい役」の配当が低いものは重い。ラッキーレディースの「合計20」は頻繁に起きるのに 4:1 しかつかない。当たりの大半を占める最低配当の水準が、ハウスエッジをほぼ決めている。
- デッキ数との関係を確認する。同ランク・同スートの重複を要求する賭け(ペア系・21+3・スート系)はデッキが多いほど player に有利で、本体とは逆に動く。2デッキ台のパーフェクトペアが48%というような極端な例もあるので、少デッキ台でサイドベットを置くのは避ける。
それでも判断がつかないなら置かない、で問題ない。サイドベットを置かないことによる損失はゼロで、本体のハウスエッジは何も変わらない。
上級者向けの補足
カウンティングとサイドベット
サイドベットは本体より不利だが、特定のカードの偏りに強く依存するため、条件が揃えば本体より大きく有利に振れる。アドバンテージプレイの文脈ではむしろ本命になることがある。
- 21+3 — 同ランク・同スートの残り枚数に依存する。Hi-Lo は無力で、スート別の専用カウントが必要。実戦では負荷が高い。
- ラッキーラッキー — 6・7・8 の残存で大きく動く。Hi-Lo とは別系統の専用カウントが有効。
- パーフェクトペア — 残りデッキ数そのものに依存する。シューの終盤ほど有利に傾く。
- インシュランス — 10札の比率だけで決まるので、Hi-Lo がそのまま使える。唯一、通常のカウントで実用になるサイドベット(TC +3 以上で取る)。
- オーバー/アンダー13 — 小さい札と大きい札の比率がそのまま結果になるため、カウントとの相性が構造的に良すぎた。カウンターに突かれて、ほとんどのカジノから撤去されたという歴史そのものが、サイドベットの脆さを示す事例になっている。Aを低札として扱う専用カウントが有効で、Hi-Lo を使う場合はカウントが非常に高いときだけオーバーに賭ける。
サイドベットは1回あたりの分散が本体より遥かに大きい。有利な局面でも資金の振れ幅は跳ね上がるので、08 資金管理 のバンクロール計算はそのままでは使えない。
例外
役が本体ルールに組み込まれている変種
スパニッシュ21 は、サイドベットではなく本体のルールとしてボーナスを持つ。10札(絵札ではなく数字の10)が全部抜かれた48枚デッキを使う代わりに、以下が本体の配当としてつく。
- 5枚で21 → 3:2/6枚で21 → 2:1/7枚以上で21 → 3:1
- 6-7-8 または 7-7-7 の21 → スート不問 3:2/同スート 2:1/すべてスペード 3:1
- プレイヤーの21は常に勝ち(ディーラーの21に負けない)、プレイヤーのブラックジャックも常に勝ち
「6-7-8」がストレートに見えるが、これはポーカーの役ではなく合計21の作り方に対するボーナス。10札が抜けている分だけ本体は不利になっており、これらのボーナスはその埋め合わせ。基本戦略も通常のブラックジャックとは別物になる。
原理
残りのカードが偏れば、有利不利も偏る
ブラックジャックはシャッフルまでカードを戻さない。だから序盤に小さい札が大量に出れば、残りは10とAが濃くなる。この状態はプレイヤーに有利で、理由は3つある。
- ブラックジャックが増える — 出やすくなるのは双方同じだが、配当が 3:2 なのはプレイヤーだけ。ここが優位の中心。
- ディーラーがバーストしやすくなる — 16以下から必ず引かされるディーラーは、大きい札が濃い状況で不利になる。プレイヤーは引かない自由がある。
- ダブルとスプリットが当たりやすくなる — 10札が濃ければ、9・10・11 からのダブルが決まりやすい。
逆に小さい札が濃い局面はハウス有利。カウンティングとは「今どちらに偏っているか」を1つの数値で追い、有利なときだけベットを厚くする手法で、個々のカードを記憶する必要はない。
Hi-Lo
タグ付け
| カード | タグ | 意味 |
|---|---|---|
| 2 · 3 · 4 · 5 · 6 | +1 | 小さい札が減った = プレイヤーに有利へ傾く |
| 7 · 8 · 9 | 0 | 数えない |
| 10 · J · Q · K · A | −1 | 大きい札が減った = ハウスに有利へ傾く |
見えたカードすべてを足していく。これがランニングカウント(RC)。1デッキ分すべて出れば合計はちょうど 0 に戻る(バランス型と呼ばれる所以)。慣れると 2枚同時に見て打ち消し合う組(+1と−1)を消していけるので、実際の負荷は見た目ほど高くない。
変換
トゥルーカウント
トゥルーカウント(TC) = ランニングカウント ÷ 残りデッキ数
RC が +6 でも、残り6デッキならほぼ無意味(TC = +1)だが、残り1.5デッキなら強い有利(TC = +4)。同じ偏りでも、残り枚数が少ないほど濃度が高いという当たり前の補正。残りデッキ数はディスカードトレイ(使用済みカードの山)の厚みを目測して推定する。
| トゥルーカウント | プレイヤーの優位(概算) | 状況 |
|---|---|---|
| −2 以下 | −1.5% | 強くハウス有利。ミニマムで流すか、席を立つ。 |
| 0 | −0.5% | シャッフル直後の中立。基本戦略どおりのハウスエッジ。 |
| +1 | 0.0% | おおよその損益分岐点。 |
| +2 | +0.5% | ここから優位。 |
| +3 | +1.0% | インシュランスが有利に転じる境目。 |
| +5 | +2.0% | 最大ベットを置く水準。 |
目安として トゥルーカウント +1 ごとに約 0.5% ずつ有利になる。基準(TC 0 で −0.5%)は台のルール次第で上下するので、H17・6:5 の台では損益分岐点がさらに上にずれる。
ベッティング
ベットスプレッド
優位はごく薄いので、不利なときに小さく、有利なときに大きく張らないと利益にならない。6デッキ・ペネトレーション75%での典型的なランプの例。
| トゥルーカウント | ベット | 備考 |
|---|---|---|
| +1 以下 | 1 ユニット | テーブルミニマム。時間の大半はここ。 |
| +2 | 2 ユニット | — |
| +3 | 4 ユニット | — |
| +4 | 6 ユニット | — |
| +5 以上 | 8〜12 ユニット | 上限は資金とヒートの許容範囲で決める。 |
ペネトレーションが最重要
同じルールでも、カットカードが浅い(50%)台と深い(80%)台では優位の出方がまったく違う。TC が高くなるのはシューの後半なので、後半を配らない台ではそもそも有利な局面が来ない。ルールが少し悪くてもペネトレーションが深い台の方が価値が高い。CSM 台は原理的に不可能。
ウォンギング(バックカウンティング)
席に着かず後ろで数え、TC が上がったときだけ参加する手法。理論上の効率は最も高いが、出入りが目立つ。途中参加を禁じる台(No Mid-Shoe Entry)も多い。座ったまま TC が下がったら最低ベットに落とす「ウォンアウトしない」運用の方が現実的。
精度がすべてを決める
優位は 1% 前後しかないため、カウントミスは即座に利益を消す。実戦投入前の目安は、1デッキを 25秒以内にノーミスで数え切れること、かつ会話しながら維持できること。TC への変換(割り算)と残りデッキ数の目測が、実戦で最初に崩れる部分。
ヒートと現実
カウンティング自体は違法ではないが、カジノは私企業として入場拒否・退店要求ができる(管轄によってはブラックジャックのみ禁止という形も)。極端なベット変動、TCと連動した明らかな増額、長時間の単独プレーは目立つ。実際の収益はスプレッド・ペネトレーション・プレー時間で決まり、1時間あたりの期待値は平均ベットの1%程度と地味なもの。
比較
他のカウンティングシステム
| システム | タグ | レベル | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Hi-Lo | 2-6:+1 / 7-9:0 / 10-A:−1 | 1 | 最も普及。習得コストと性能のバランスが最良で、資料も最も多い。まずこれ。 |
| KO Knock-Out | 2-7:+1 / 8-9:0 / 10-A:−1 | 1 | アンバランス型でトゥルーカウント変換が不要。割り算をなくせる代わりに、インデックスプレーの精度は落ちる。 |
| Zen Count | 2,3,7:+1 / 4,5,6:+2 / 8,9:0 / 10:−2 / A:−1 | 2 | ベット判断とプレー判断の両方で Hi-Lo を上回る。負荷は明確に増える。 |
| Omega II | 2,3,7:+1 / 4,5,6:+2 / 8:0 / 9:−1 / 10:−2 / A:0 | 2 | プレー判断の精度が高い。Aを数えないため、別途エースサイドカウントが必要。 |
| Wong Halves | 2,7:+0.5 / 3,4,6:+1 / 5:+1.5 / 8:0 / 9:−0.5 / 10,A:−1 | 3 | ベット判断の精度は最高クラス。小数を扱うため実戦負荷が非常に高い。 |
上位システムが Hi-Lo に対して上乗せする期待値はおおむね 0.1〜0.2% 程度。実戦でのミス率の上昇がこれを簡単に食い潰すため、「Hi-Lo をノーミスで回す」方が「高性能システムを時々間違える」より強い、というのが定説。
インデックスプレイ
カウントによって基本戦略を上書きする
基本戦略は「デッキの構成が平均的なとき」の最適解。カウントが偏っていれば最適解も動く。その切り替え点(インデックス数)を覚えて打ち方を変えるのがインデックスプレイ。利益の大半はベット額の調整から来ており、インデックスの寄与はその上乗せだが、上位数個は費用対効果が非常に高い。
最優先
まず覚える1つ
インデックスプレイの中で単独で最も価値が高い。他のどの1手より期待値への寄与が大きく、判断も「アップカードがAのときだけ」と限定されるので実戦負荷も低い。逆に言えば、これ以外を1つも覚えなくても、これだけは覚える価値がある。
Illustrious 18
影響の大きい18手
影響度の大きい順。上から6つほどで、18個すべてを覚えた場合の効果の 8割前後に到達する。
| # | ハンド | 対 | インデックス | TC がインデックス以上のとき | 未満のとき |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | インシュランス | A | +3 | 取る | 取らない |
| 2 | ハード16 | 10 | 0 | スタンド | ヒット |
| 3 | ハード15 | 10 | +4 | スタンド | ヒット |
| 4 | 10,10 | 5 | +5 | スプリット | スタンド |
| 5 | 10,10 | 6 | +4 | スプリット | スタンド |
| 6 | ハード10 | 10 | +4 | ダブル | ヒット |
| 7 | ハード12 | 3 | +2 | スタンド | ヒット |
| 8 | ハード12 | 2 | +3 | スタンド | ヒット |
| 9 | ハード11 | A | +1 | ダブル | ヒット |
| 10 | ハード9 | 2 | +1 | ダブル | ヒット |
| 11 | ハード10 | A | +4 | ダブル | ヒット |
| 12 | ハード9 | 7 | +3 | ダブル | ヒット |
| 13 | ハード16 | 9 | +5 | スタンド | ヒット |
| 14 | ハード13 | 2 | −1 | スタンド | ヒット |
| 15 | ハード12 | 4 | 0 | スタンド | ヒット |
| 16 | ハード12 | 5 | −2 | スタンド | ヒット |
| 17 | ハード12 | 6 | −1 | スタンド | ヒット |
| 18 | ハード13 | 3 | −2 | スタンド | ヒット |
Fab 4
サレンダーのインデックス
レイトサレンダーが使える台でのみ意味を持つ4手。TC がインデックス以上ならサレンダーする。
| ハンド | 対 | インデックス | 未満のとき(基本戦略) |
|---|---|---|---|
| ハード14 | 10 | +3 | ヒット |
| ハード15 | 10 | 0 | サレンダー(基本戦略でも同じ) |
| ハード15 | 9 | +2 | ヒット |
| ハード15 | A | +1 | ヒット(S17)/サレンダー(H17) |
覚える順番
- インシュランス +3
- 16 対 10 が 0
- 15 対 10 が +4
- 12 対 3 が +2 / 12 対 2 が +3
- 10,10 対 5・6(+5 / +4)
ここまでで実用上ほぼ足りる。残りは高カウント時にしか発生しないか、頻度が低い。
注意点
- インデックスはシステムとルールに紐づく。Hi-Lo 用の数値を KO や Omega II に流用してはいけない。
- H17 台では 15 対 A・17 対 A まわりが変わる。
- 10,10 のスプリットは非常に目立つ行動。実利は小さいので、ヒートを考えるなら見送る判断も合理的。
- デッキ数が違うとインデックスもずれる。1〜2デッキ台では別表。
分散
優位より、揺れの方がずっと大きい
カウンティングで得られる優位はせいぜい 1%。一方、1ハンドあたりの標準偏差は約 1.15ユニット。つまりノイズが信号の100倍以上ある。資金管理とは、この揺れに飲み込まれて破産する前に長期の期待値が顕在化するまで生き延びるための設計のこと。
到達時間
N0 — 優位が揺れを追い越すまでのハンド数
N0 = 分散 ÷ 優位性²
期待利益が標準偏差と等しくなるまでのハンド数。「ここまでやって、ようやく実力と運が同じ大きさ」という地点であり、勝ちが保証される数ではない。
| 優位性 | N0(ハンド) | 実時間の目安 |
|---|---|---|
| 0.5% | 52,000 | 約 700 時間 |
| 1.0% | 13,000 | 約 180 時間 |
| 1.5% | 5,800 | 約 80 時間 |
| 2.0% | 3,250 | 約 45 時間 |
1時間あたり約70〜80ハンド(フルテーブル)で換算。1% の優位でも、実力が運を上回るのに180時間かかる。1回の旅行や1晩の結果は、優位の有無と何の関係もない。
ベットサイズ
ケリー基準
最適ベット = 資金 × 優位性 ÷ 分散
例: 資金100万円、優位1%、分散1.3 → 1万円 ÷ 1.3 ≒ 7,700円。これがフルケリー。実務では変動が激しすぎるため ハーフケリー(半分)にするのが一般的で、期待成長率は 3/4 に落ちる代わりに、資金が半減する確率が大きく下がる。
破産確率
必要なバンクロール
1ユニット固定・優位1%・分散1.3 でプレーし続けたときの破産確率(RoR ≒ exp(−2 × 優位 × 資金 ÷ 分散))。資金はユニット数。
| バンクロール | 破産確率 | 評価 |
|---|---|---|
| 100 ユニット | 21% | 5人に1人が飛ぶ。短期の遊びなら許容範囲だが、継続には向かない。 |
| 200 ユニット | 4.6% | — |
| 300 ユニット | 1.0% | 一般に推奨される最低ライン。 |
| 500 ユニット | 0.05% | 実質的に破産しない。 |
優位がない場合の資金管理
基本戦略のみ(=期待値マイナス)なら、どんな資金管理をしても長期の結果はマイナスに収束する。資金管理は損失を減らすのではなく、遅らせるだけ。この場合に意味があるのは「使ってよい金額を先に決め、それ以上は持ち込まない」という一点に尽きる。
時間あたりの期待値
1時間の期待値 = ハンド数 × 平均ベット × 優位性。100ハンド/時、平均ベット5,000円、優位1% なら 5,000円/時。この数字の周りを、標準偏差約6万円で毎時間振れる。1晩の勝ち負けが実力を語らないのはこのため。
コンプの扱い
ホテル・食事・リベートは実質的な収益。優位がわずかにマイナスでも、コンプ込みでプラスになる設計はあり得る。ただし高いベットを長時間打つことが条件になるため、分散は増える。
資金は分離する
生活資金と混ぜた時点で、正しいベットサイズを維持できなくなる。ケリー基準は「その資金を失っても意思決定が変わらない」ことが前提で、この前提が崩れると数式ごと無効になる。
テーブルで
ハンドシグナル
意思表示は手の動作で行うのが正式。天井カメラが記録しており、揉め事はこの映像で判定されるため、口頭だけでは不十分。シューゲーム(カード表向き)とピッチゲーム(カード裏向き・手に持つ)で作法が違う。
| アクション | シューゲーム(表向き) | ピッチゲーム(手に持つ) |
|---|---|---|
| ヒット | 指でテーブルを軽く2回叩く、または手前に掻く動作。 | 持っているカードでテーブルを軽く擦る。 |
| スタンド | 手のひらを下にして、テーブルの上で水平に振る。 | カードをベットの下に差し込む。 |
| ダブル | ベットの横に同額のチップを置き、指を1本立てる。 | 同上+カードを表向きに出す。 |
| スプリット | ベットの横に同額を置き、指を2本立てる(V字)。 | 同上。 |
| サレンダー | テーブルにカードの後ろで横に一直線を引く動作+口頭で「サレンダー」。 | — |
作法
テーブルマナー
やること
- 現金はディーラーに手渡さず、テーブルの上に置く。「チェンジ」と言えばチップに替えてくれる。
- 着席はラウンドの切れ目で。カードが配られている最中に割り込まない。
- チップは大きい額を下、小さい額を上に積む。
- 席を外すときは「マーク(マーカー)お願いします」と伝えると席を確保してもらえる(時間制限あり)。
- 写真撮影・携帯電話はテーブルでは基本的に禁止。
やらないこと
- シューゲームでカードに触る(表向きに配られたカードは触らない)。
- 他人のプレーに口を出す。特にサードベースの人を責めるのは最も嫌われる。
- ベット確定後にチップを動かす。
- 飲み物をテーブルのフェルト上に置く(専用のホルダーがある)。
- ディーラーに「どうすればいい?」と聞き続ける。基本戦略カードを持ち込む方が確実で、多くのカジノで持ち込み自体は認められている。
位置づけ
法的な前提
- 日本国内で金銭を賭けてブラックジャックを行うことは賭博罪(刑法185条)にあたる。国内でプレーできるのは、金銭の授受を伴わないアミューズメント(ノーレート)形式のみ。この資料は海外のカジノ、または金銭を賭けない場での知識として整理している。
- 国内の統合型リゾート(IR)は法制度上は認められているが、施行状況は時期により変わるため、実際に行くときは最新の情報を確認する。
- カウンティングは頭の中で数えているだけなので、それ自体は違法ではない。ただしカジノは私企業として入場拒否・退店要求・特定ゲームの禁止ができる。管轄によって扱いは異なる。
- デバイス(機械・アプリ)を使ったカウントは多くの管轄で明確に違法。頭の中とデバイスの間に、法的には大きな線が引かれている。
オンラインカジノでカウントが効かない理由
通常のオンラインブラックジャック(RNG)は毎ハンドごとにシャッフルされるため、残りカードの偏りという概念自体が存在しない。ライブディーラー形式でも、多くはペネトレーションが50%程度と浅く、CSMを使う卓も多いため実用的な優位は生まれない。
基本戦略カードの持ち込み
多くのカジノでプラスチック製の基本戦略カードをテーブルに置いてよい。プレーが遅れない範囲であれば咎められないことがほとんど。記憶があいまいなまま打つより、見て正確に打つ方が確実に得。
座る位置
期待値には影響しない。ただしサードベース(最後)は最も多くのカードを見てからアクションできるため、カウンティング時は情報が1周分多く手に入る。逆に他プレイヤーからの視線と責任も集まる。
練習の順序
基本戦略をノーミスで打てるようになる → ルール別の差分を入れる → Hi-Lo のランニングカウント(1デッキ25秒) → トゥルーカウント変換 → 上位インデックス数個。順番を飛ばすと、カウントしながら基本戦略を間違えるという最悪の状態になる。