ブラックジャック リファレンス

4〜8デッキ / S17・H17 併記

前提

ディーラーと1対1で、21を超えずに勝つ

同じテーブルに何人座っていても、勝負は常に「自分 対 ディーラー」。隣のプレイヤーとは競っていない。ディーラーには裁量がなく、17以上になるまで引き続けるという固定手順しかない。だからこの手順を前提に、こちらの選択だけを最適化できる。それが基本戦略の正体。

3:2ブラックジャックの配当(良い台)
17ディーラーが引くのをやめる合計
0.4%良条件+基本戦略のハウスエッジ

カードの数え方

2 〜 10
数字どおり。
J / Q / K
すべて 10。デッキの13種のうち4種が10なので、約31%(4/13)が10札。
A(エース)
1 または 11 のうち、その時点で有利な方。21を超えるなら自動的に 1 として扱われる。
スーツ
ブラックジャックでは一切意味を持たない。ハートもスペードも同じ。

ハードハンド
Aを含まない、またはAを11として使えない手。例: 10+6 = ハード16。A+5+9 = ハード15(Aを11にすると25でバーストするため)。
ソフトハンド
Aを11として数えられる手。1枚引いてもバーストしないのが最大の特徴。例: A+6 = ソフト17。
ブラックジャック
最初の2枚が A + 10札。合計21だが「21」とは別格で、3:2 の配当がつく。スプリット後にできた A+10 はブラックジャック扱いにならない(ただの21)。

1ハンドの進行

手順

  1. ベットを置く。カードが配られる前にベッティングサークルへチップを置く。以降このハンド中は元のベット額を減らせない。
  2. 配札。プレイヤーに2枚(表向き)、ディーラーに2枚。ディーラーの1枚は表(アップカード)、1枚は裏(ホールカード)。
  3. ブラックジャックのチェック。ディーラーのアップカードが A または 10札のとき、ホールカードを覗いて(ピーク)ブラックジャックかどうかを確認する。A のときはこの前にインシュランスの募集が入る。ブラックジャックなら即座に全員の負けが確定(プレイヤーもブラックジャックならプッシュ)。
  4. プレイヤーのアクション。ディーラーから見て左端(ファーストベース)から順に、ヒット/スタンド/ダブル/スプリット/サレンダーを選ぶ。21を超えた時点でバースト=ディーラーの手を見る前に負けが確定する。
  5. ディーラーのプレー。ホールカードを開き、16以下なら必ず引く/17以上なら必ず止まる。判断は一切入らない。ソフト17(A+6)を引くか止まるかは台のルール次第(S17 / H17)。
  6. 精算。ディーラーがバーストすれば、残っている全員の勝ち。バーストしなければ合計を比較して高い方の勝ち。同点はプッシュ(引き分け=ベット返却)。
手順4がすべての鍵。プレイヤーが先にバーストすると、その後ディーラーがバーストしても負けたまま。この非対称性がハウスエッジの主要な源で、ブラックジャック3:2の配当・ダブル・スプリットはその埋め合わせとして与えられている。

配当の分かれ目

同じ21でも、配当が1.5倍と1倍に分かれる

「ブラックジャック(ナチュラル)」と呼べるのは、最初に配られた2枚が A + 10札のときだけ。これだけが 3:2 で、1万円賭けていれば1万5千円の勝ち。それ以外の21はすべて 1:1 で、1万円の勝ちにしかならない。差を生むのは手の構成ではなく、成立したタイミング。

ナチュラルになる4パターン(すべて同格)

A♠10♥
A + 10
3:2
A♠J♦
A + J
3:2
A♠Q♣
A + Q
3:2
A♠K♥
A + K
3:2

10・J・Q・K はすべて「10」として完全に同一。絵札が格上といった序列は一切ない。スートも無関係。ポーカーと違い、点数だけのゲーム。

10札は 52枚中16枚=約31%。だから絵札が絡む場面が頻繁に出て印象に残る。インシュランスを勧められる根拠もこの比率だが、31% は 1/3 に届かないので期待値では断るのが正解(詳細は 04 確率と期待値)。

これらは「ただの21」= 1:1

  • スプリット後の A+10 — A-A を割って片方に10が来た。合計21でもナチュラル扱いにならない。
  • ダブルダウンで21 — 追加の1枚で21になっても同じ。
  • 3枚目以降で完成した21 — A+10 の組み合わせでも、後から揃ったなら 1:1。
  • 小さい札を重ねた21 — 5・4・6・6 の4枚でも、8・7・6 でも同じ。

手の強さとしては、これら全部が完全に同じ。21は21で、枚数も構成も一切関係ない。ディーラーの21とはプッシュになる。

小さい札を積み重ねた21はバーストを何度もくぐり抜けた結果なので見ていて盛り上がるが、映像的な価値と金銭的な価値は別物。

なぜ割った後の21を格下げするのか。A-A を割って 1.5倍配当を量産できてしまうと、店側の期待値が崩れるため。「配られた瞬間に出来ていた手」と「操作して作った手」を分ける線引き。それでも A-A は必ず割る——割らずに打つと A-A=ソフト12 という、どこにも行けない手になるので、1:1 でも割った方が期待値は高い。
「ディーラーのナチュラルに、こちらの21が負ける」はピーク方式の台では起こらない。アップカードが A か 10札のとき、ディーラーはプレイヤーが行動する前にホールカードを確認する。ナチュラルならその場でハンドが終わるので、スプリットして21を作る機会自体が来ない。この事故が起き得るのは、ディーラーが最初に1枚しか取らないノーホールカード(ENHC)方式の台だけ(欧州系に多い)。ピーク台でのナチュラルとの差は、配当が 3:2 か 1:1 かの一点に尽きる。

ファイブカード・チャーリー(21を超えずに5枚引き切ったらディーラーの手に関係なく自動勝利)は、採用している店がごく少数のローカルルール。「21が強い」ではなく「バーストせず枚数を重ねたら勝ち」という別枠の特典なので、21の価値の話とは切り離して考える。採用されていればプレイヤーに +1.46% と極めて大きい。

プレイヤーの選択肢

使える手は6つだけ

アクション内容条件・注意
ヒット
Hit
カードを1枚引く。21を超えるまで何度でも。21を超えた瞬間にバースト。ディーラーの手番を待たずに負け。
スタンド
Stand
引くのをやめて手番を終える。—
ダブルダウン
Double Down
ベットを倍にして、ちょうど1枚だけ引いて手番終了。最初の2枚のときのみ。多くの台はどの2枚でも可(Double on Any 2)だが、9〜11のみ・10〜11のみに制限する台もある。スプリット後にダブルできるかは DAS ルール次第。
スプリット
Split
同じ数字のペアを2つのハンドに分け、同額を追加ベットして両方をプレーする。通常3回まで(=最大4ハンド)。Aのスプリットは各1枚ずつしか引けず、追加ヒット不可の台がほとんど。A分割後の A+10 はブラックジャック扱いにならない。10とKなど「どちらも10」を分けられるかは台次第。
サレンダー
Surrender
降りてベットの半額を返してもらう。採用していない台も多い。通常は「レイトサレンダー」=ディーラーのBJチェック後にのみ可能。最初の2枚のときだけ。出番は 約20ハンドに1回(6デッキ・S17でシミュレーションすると該当局面は 4.96%)=1時間に3〜5回。決して珍しくない。
インシュランス
Insurance
ディーラーのアップカードがAのとき、元ベットの半額までを「ディーラーがBJである」方に賭ける。当たれば2:1。原則として取らない。カウントしていない限り常に不利(詳細は「確率と期待値」)。自分がBJのときに提案される「イーブンマネー」も中身は同じ賭けなので同様に断る。

この6つが本体でできることのすべて。ここに「役を作る」という選択肢は存在しない。

よくある誤解

「1枚しか引けない」のは A のスプリットだけ

スプリット全体に1枚制限があると誤解されやすいが、制限がかかるのは A-A を割ったときだけ。他のペアは分けたあと、それぞれ普通のハンドとして最後までプレーできる。

割ったペア分けた後にできること備考
A-A 各ハンドに1枚ずつだけ。追加ヒット不可。 その1枚が10札で21になってもナチュラル扱いにならず 1:1。ダブルも不可の台がほとんど。
2-2 〜 10-10
A 以外すべて
ヒットは何回でも可。DAS可の台ならダブルもできる。通常のハンドと同じ。 リスプリットも通常3回まで(最大4ハンド)。

なぜ A だけ縛られるのか

A が最も強い札だから。A を2枚に分けて自由に引けると、どちらの手も「11から始めて何度でも引き直せる」形になり、プレイヤーが強くなりすぎる。

実際の数値で見ると、A スプリット後に自由に引ける台はプレイヤーに +0.19%。ルール1つの効果としては大きい部類で、だからほぼ全ての店が1枚制限をかけている。

RSA(Re-Split Aces)がある台は有利

分けた A にもう一度 A が来たとき、さらに割れるルール。あればプレイヤーに +0.08%。

ただし割り直した後もやはり1枚ずつで、引ける枚数の制限は変わらない。増えるのは「弱いソフト12を抱え込まずに済む」機会の方。

RSA の有無はフェルトには書かれていないことが多いので、気になるならディーラーに聞く。

フェルトの読み方

自分の前にある「丸」は全部で3〜4個ある

各席の前には、メインベットの円のほかに小さな円が1〜2個ある台がほとんど。それぞれ別の賭けで、置かなくてもよい。どれが何かはフェルトの印字で決まっていて、位置は台によって上下する。

ディーラー側 ディーラー / シュー / チップトレイ INSURANCE PAYS 2 TO 1 側① サイドベット ① 21+3 / Flush / Hot 3 など 本体 メインベット ブラックジャック本体。ここだけは必須 側② サイドベット ② パーフェクトペア / Any Pair など 後ろ バックベット 他人の手に相乗り。円が無い台も多い 手前(自分)
置き場所正体置くべきか
メインベットの円ブラックジャック本体。一番大きい円で、席の正面。必須。ここに置かないとハンドに参加できない。
小さい円(1〜2個)サイドベット。フェルトに「21+3」「PERFECT PAIRS」等と印字されている。本体とは完全に独立した別の賭け。任意。置かないのが基本(本体の10倍前後不利)。
インシュランスラインテーブルを横切る円弧状の線。「INSURANCE PAYS 2 TO 1」と印字。円ではなく線。ディーラーのアップカードがAのときだけ使う。原則なし。カウントしていない限り常に不利。
他人の円の後ろバックベット。自分の席ではなく、座っている他のプレイヤーの手に相乗りする賭け。専用の円がある台と、単にその人のチップの後ろに置くだけの台がある。任意。座っている人の腕次第で有利にも不利にもなる(下記)。
自分の円の外側
(印字なし)
ディーラーへのチップ(トーク)。印刷された円ではなく、自分のベットのすぐ手前や横に置く慣習的な位置。「ディーラーの分も一緒に賭ける」形になる。任意。マナーであって義務ではない。
ストレート・フラッシュ・スリーカードといったポーカーの役が出てくるのは、すべてサイドベットの側。本体に役の概念はないので、「BJでフラッシュが揃った」という話は小さい円の方で起きている。代表は 21+3(自分の2枚+ディーラーのアップカードで3枚ポーカー)で、カジノによっては Flush/Straight 2 Flush/Tri Lux/Hot 3 など別の名前で同じ構造の賭けが置かれている。

サイドベットの円がどちら側(ディーラー寄り/手前)に来るかは台とメーカーによって入れ替わるので、位置ではなくフェルトの印字で判断する。種類・配当表・ハウスエッジは 05 サイドベット にまとめてある。本体の打ち方はサイドベットの有無に一切影響されない——置いても置かなくても、基本戦略は同じ。

自分の席以外に置く

バックベット — 他人の手に乗る

席が満席のとき、あるいは調子の良さそうな人に乗りたいときに、座っている他のプレイヤーのベットの後ろに自分のチップを置く。結果はその人の手とまったく同じ——勝てば同じ配当、負ければ同じだけ失う。マカオの実店舗では非常に一般的で、1つの席の後ろに何人も乗っている光景が普通に見られる。オンラインのライブカジノでも「Bet Behind」として正式機能になっており、7席が埋まっていても人数無制限で参加できる。

決定権は一切ない

ヒット・スタンド・ダブル・スプリットの判断はすべて座っている人が行う。バックベット側から口を出す権利はないし、その人が明らかな悪手を打っても止められない。

例外は次の2つだけ。

  • その人がスプリットしたとき — ①同額を追加して両方の手に乗る ②追加せず1つ目の手だけに乗る、を選べる
  • その人がダブルしたとき — 追加するかどうかを選べる(オンラインでは事前に設定しておく)

ハウスエッジは「その人の腕」で決まる

これが本体との決定的な違い。基本戦略どおりに打つ人の後ろなら本体と同じ 約0.4% だが、下手な人の後ろに乗れば、その人のミス分がそのまま自分の損になる。自分では一切修正できない。

つまりバックベットで最初にやるべきことは、その人が基本戦略を守っているかを数ハンド観察すること。16で7に対して止まる、A,7 で18だからと必ず止まる、といった打ち方をする人の後ろには乗らない。

バックベット側だけが持つ、わずかな優位。スプリット時に「乗らない」を選べるのは座っている人にはない選択肢で、これを最適に使うとハウスエッジが 0.08% 下がる(座っている人が自分に最適な判断をする場合)。座っている人がバックベット側の都合まで考えて打ってくれるなら 0.20% まで広がる。小さいが、構造上バックベット側が有利になる唯一の点。

なお、席に座らずに資金を投じられるため、カウンティングをする側にとっては「座らずに賭ける」手段にもなる。それを警戒して、バックベットを禁止したり上限を低く設定したりするカジノもある。

用語

テーブルで飛び交う言葉

用語意味
アップカードディーラーの表向きのカード。プレイヤーの全判断はこの1枚を軸に決まる。
ホールカードディーラーの裏向きのカード。
シュー複数デッキをまとめて入れる配札用の箱。4〜8デッキが一般的。
ピッチゲーム1〜2デッキを手で配る形式。プレイヤーがカードに触れてよい台が多い。
カットカードシューに差し込まれた色付きの板。これが出たらそのラウンド終了後にシャッフル。
ペネトレーションシャッフルまでに使われるカードの割合。75%なら6デッキ中4.5デッキが消化される。カウンティングの成否を左右する最重要要素。
ファーストベースディーラーから見て左端=最初にアクションする席。
サードベースディーラーから見て右端=最後にアクションする席。
S17 / H17ディーラーがソフト17(A+6)でスタンドするか(Stand)、ヒットするか(Hit)。プレイヤーにとってS17が有利。
DASDouble After Split。スプリットした後のハンドでダブルできるルール。プレイヤーに有利。
RSARe-Split Aces。分けたAをさらに分けられるルール。プレイヤーに有利。
CSMContinuous Shuffling Machine。毎ラウンド戻して混ぜ続ける機械。カウンティングが完全に無効になる。
ノーホールカードディーラーが最初に1枚しか取らない方式(欧州系に多い)。ダブル/スプリット後にディーラーBJが判明すると追加分まで失う台がある(下記OBOでなければ不利)。
OBOOriginal Bets Only。ノーホールカード台で、ディーラーBJのとき失うのは元ベットだけというルール。実質的にホールカードありと同等。
トーク(トウク)ディーラーへのチップ。自分のベットの手前に置いて「一緒に賭ける」形が一般的。
ヒートカジノ側からの警戒・監視。

最初の意思決定

どう打つかより、どこに座るか

基本戦略を完璧に覚えても取り返せる差はせいぜい 0.5% 程度。ところが「ブラックジャックが 3:2 か 6:5 か」だけで 1.4% 動く。つまり台選びを間違えた時点で、戦略の努力は全部帳消しになる。座る前に見るべきものは決まっている。

6:5 の台には座らない。テーブルの表示(BLACKJACK PAYS 6 TO 5)で判別できる。1万円のベットでブラックジャックが出たとき、3:2 なら 15,000円、6:5 なら 12,000円。この1点だけでハウスエッジは約 0.4% から約 1.8% へ、4倍以上に跳ね上がる。

チェック順

座る前に確認する5項目

  1. ブラックジャックの配当 — 3:2 であること。6:5 や 1:1 は論外。ここだけは妥協しない。
  2. ディーラーのソフト17 — テーブルに「Dealer must stand on all 17s」(S17)とあれば良い台。「Dealer hits soft 17」(H17)なら 0.22% 不利。
  3. デッキ数 — 少ないほど有利。ただし少デッキ台は 6:5 とセットになっていることが多いので、必ず1と併せて見る。
  4. ダブルとスプリットの自由度 — 「どの2枚でもダブル可」「DAS可」「Aのリスプリット可」が揃っているほど良い。
  5. サレンダーの有無 — あれば +0.08%。小さいが無料でもらえる。

この他、カウンティングをするならペネトレーション(カットカードの深さ)とCSMの有無が最重要。CSM台はカウントが原理的に成立しない。

数値

ルールごとの期待値への影響

6デッキ・S17・DAS可・BJ 3:2・基本戦略を基準(ハウスエッジ 約0.45%)としたときの、各ルールの増減。プラスはプレイヤー有利、マイナスは不利。値は概算で、他ルールとの組み合わせで多少変動する。

ルール影響コメント
ブラックジャックが 6:5−1.39%単独で他のすべてを打ち消す。回避一択。
ブラックジャックが 1:1−2.27%もはや別ゲーム。
ディーラーが H17−0.22%マカオ・韓国・シンガポール等で標準的。
ダブルが 9〜11 のみ−0.09%ソフトハンドのダブルが封じられる。
ダブルが 10〜11 のみ−0.18%—
DAS 不可−0.14%ペアの戦略が数箇所変わる。
スプリットが1回まで−0.10%—
8デッキ → 6デッキ+0.02%—
8デッキ → 2デッキ+0.19%—
8デッキ → 1デッキ+0.48%ただし1デッキ台はほぼ 6:5。
レイトサレンダー可+0.08%—
アーリーサレンダー可+0.6%現代ではほぼ絶滅。
A のリスプリット可+0.08%—
A スプリット後にヒット可+0.19%珍しい好条件。
5枚チャーリー(5枚で自動勝ち)+1.46%まず見かけない。あれば座る価値あり。

組み合わせ

実在しやすい3タイプの台

良い台

6デッキ / S17 / DAS / LS / 3:2

0.4%ハウスエッジ

100回×1,000円ベットで理論損失 約400円。ラスベガスのストリップ高ミニマム卓やダウンタウンに残っている水準。

標準的な台

8デッキ / H17 / DAS / サレンダー無 / 3:2

0.7%ハウスエッジ

アジア圏のカジノで最もよく見る条件。基本戦略を守れば十分に遊べる範囲。

避ける台

6デッキ / H17 / 6:5

2.0%ハウスエッジ

低ミニマム卓に多い形。損失ペースは良い台の5倍。ミニマムが安くても座らない方が結果的に安い。

サイドベット(21+3、パーフェクトペア、ラッキーラッキー等)のハウスエッジはおおむね 2〜10%。本体の 0.4% とは桁が違う。カウンティングをしても本体のカウントとは連動しないため、期待値上の扱いは「別の不利なゲーム」。

基本戦略

自分の手 × ディーラーのアップカードで一意に決まる

基本戦略とは「この状況で最も損の少ない選択」をすべて計算し尽くした表のこと。直感や流れは一切関係なく、同じ状況なら常に同じ答えになる。以下は 4〜8デッキ・DAS可・レイトサレンダー可・Aスプリット後は各1枚 を前提とした表。

ディーラーのソフト17

ハードハンド

ソフトハンド(Aを11として使える手)

ペア(スプリットの判断)

ペアの表で「スプリットしない」と出た場合は、その合計をハード表(またはソフト表)で引き直す。例: 7,7 対 8 は「H」=ハード14として扱いヒット。

凡例

Hヒット Sスタンド Dダブル(不可ならヒット) Dsダブル(不可ならスタンド) Pスプリット Rサレンダー(不可ならヒット) Rsサレンダー(不可ならスタンド) Rpサレンダー(不可ならスプリット)

角に三角のあるマスは、S17 と H17 で答えが変わる箇所。上のトグルで切り替わる。

差分

H17 で変わるのは6箇所だけ

状況S17H17理由
ハード11 対 AヒットダブルH17ではディーラーのAが強くなりすぎるため、勝ちに行くよりベットを厚くする価値が上回る。
ソフト18(A,7)対 2スタンドダブルディーラーがソフト17から引き直す分だけバーストしやすくなる。
ソフト19(A,8)対 6スタンドダブル同上。6に対する優位が最も広がるハンド。
ハード15 対 AヒットサレンダーAの強さが増し、勝率が半額返還を下回る。
ハード17 対 AスタンドサレンダーH17のAに対する17は期待値が −0.5 を割り込む。
8,8 対 Aスプリットサレンダー分けた2つのハンドの合計期待値が半額返還より悪くなる。サレンダー不可ならスプリット。

ハード16 対 A のサレンダーは S17・H17 どちらでも同じ(サレンダー)。

記憶

覚える順番

上から順に、覚えた分だけ効果が出る並びにしてある。1〜4 だけでハウスエッジの大半は回収できる。

  1. 17以上は必ずスタンド。ハード17以上は例外なし(サレンダーが使える台のH17・対Aだけが例外)。
  2. ディーラーが 2〜6 なら 12〜16 でスタンド。ただし 12 対 2 と 12 対 3 だけはヒット。この2マスが唯一の例外で、間違えやすい。
  3. ディーラーが 7〜A なら 12〜16 はヒット。バーストが怖くても引く。止まっても負けるだけだから。
  4. A,A と 8,8 は常にスプリット。10,10 と 5,5 は絶対にスプリットしない。ここは無条件で覚える。
  5. 11 は常にダブル(S17でAが相手のときだけヒット)。10 は 2〜9 に対してダブル。
  6. ソフト17(A,6)以下では絶対にスタンドしない。引いてもバーストしないので、止まる理由がない。
  7. ソフト18(A,7)は「9・10・A に対してはヒット」。18で止まりたくなるが、ここが最も損をしやすい判断。
  8. 最後にソフトハンドのダブル範囲と、細かいペアの分岐を詰める。

条件が違う台では

表を使うときの読み替え

DAS が無い台

  • 2,2 と 3,3 対 2・3 → スプリットせずヒット
  • 4,4 → どこでもスプリットしない(ヒット)
  • 6,6 対 2 → スプリットせずヒット

サレンダーが無い台

  • R(サレンダー)のマスはすべて代替アクションに読み替える。凡例の Rh=ヒット、Rs=スタンド、Rp=スプリット。
  • つまり 16 対 9・10・A はヒット、15 対 10 はヒット。

1〜2デッキの台

  • この表とは十数箇所ずれる(8,8 対 10 のサレンダー、11 対 A のダブル、ソフトダブルの範囲など)。
  • 少デッキ台に座るなら専用表を用意する。多デッキ表の流用は 0.1% 前後の追加損失になる。

ノーホールカード台(OBOでない)

  • ディーラーが 10 または A のとき、ダブル・スプリットで追加した分まで失う可能性がある。
  • 対 A・対 10 でのダブルとスプリットを控えめにする(11 対 10 はヒット、8,8 対 10・A はヒット等)。

根拠

なぜその表になるのか

基本戦略の各マスは「その選択をしたときの期待値」を全パターン計算して、最大のものを選んだ結果。勝率ではなく期待値で決まっていることが重要で、だから「勝率が低くてもこちらが正解」という手が普通に出てくる。

出発点

ディーラーのバースト率(アップカード別)

弱いアップカード(2〜6) 強いアップカード(7〜A)

6デッキ・S17・ディーラーがブラックジャックをチェックする台での概算値。この分布が基本戦略のほぼすべてを説明する — 2〜6 に対しては「引かずに待つ」、7〜A に対しては「自分で作りにいく」。7 と 6 の間の段差(約16ポイント)が、12〜16 の判断が真っ二つに割れる理由。

なぜ 16 対 10 はヒットなのか

スタンドすると、ディーラーが 10 でバーストする確率は約 21%。つまり 約79%負ける。ヒットすると自分のバースト確率は約 62% だが、生き残った 38% のうちかなりが勝つ。計算すると期待値は スタンド −0.54 に対し ヒット −0.51。どちらも大きく負けるが、ヒットの方が損が小さい。サレンダーが使えるなら −0.50 で確定するのでそちらが最善。

なぜ 12 対 2 はヒットで、12 対 4 はスタンドなのか

12 でヒットしてバーストするのは 10札を引いたときだけ(約31%)。一方ディーラーの 2 はバースト率が 35% しかなく、待っても足りない。4 になるとバースト率が 40% まで上がり、待つ方が有利になる。12 だけは 2・3 に対してヒットという例外はここから来ている。13以上はバースト確率が上がるので 2 から待ちに転じる。

なぜ A,7(ソフト18)で 9・10・A に引くのか

18 は強そうに見えるが、ディーラーが 9・10・A で作る手の中央値は 19〜20。18 でスタンドすると期待値はマイナス。ソフトなので引いてもバーストせず、改善の余地しかない。「良さそうな手だから止める」は最も高くつく直感。

なぜ 8,8 を 10 に対しても分けるのか

16 のまま戦うのは最悪のハンド(期待値 −0.54)。8 から2つ作り直せば、1ハンドあたりの期待値は −0.48 程度まで改善する。「負けを増やしに行く」ように見えて、実際は損失を減らす手。サレンダー(−0.50 で確定)と比べても −0.48 の方が良いので、8,8 対 10 はサレンダーせずスプリットが正解。H17 で対 A のときだけ、この関係が逆転してサレンダーになる。

インシュランス

「保険」ではなく、単体で不利な別ゲーム

ディーラーのアップカードが A のとき、ホールカードが 10札ならインシュランスは 2:1 で当たる。つまり 残りのカードの 1/3 超が10札なら得、それ未満なら損。

条件10札の割合インシュランスの期待値
損益分岐点33.3%0
通常のデッキ構成30.8%(4/13)−7.7%
Hi-Lo のトゥルーカウント +3 以上33.3% 超プラス

結論: カウントしていないなら常に断る。自分がブラックジャックのときに提案される「イーブンマネー」(1:1で確定精算)も、数式上はインシュランスを取るのと完全に同一。3:2 を捨てて 1:1 を取る行為なので、同じく断る。カウントしている場合のみ、トゥルーカウント +3 以上で取る(インデックスプレイの中で最も価値が高い1手)。

誤解

よくある間違い

よく言われること実際
サードベースの人が下手だと全員が負ける長期的には無関係。カードの並びを変えるだけで、他人のプレーが自分の期待値に与える影響はゼロに収束する。「あの人が引いたせいで」は結果論。
ディーラーのホールカードは10だと思え10札は 13種のうち4種、約31%。「10だと仮定する」は目安として便利だが、確率としては誤り。基本戦略はすでに正しい分布で計算されている。
バーストしそうだから引かない12〜16 対 7〜A は、引く方が損失が小さい。「バーストしたくない」という感覚が最大の損失源。
負けが込んだら倍賭けすれば取り返せる(マーチンゲール)テーブルリミットと資金の上限で必ず止まる。1回の破滅的な連敗ですべてを失う形に変換しているだけで、期待値は1ミリも改善しない。
ホットなテーブル/流れが来ているシャッフル後の各ハンドは独立。唯一の例外がカウンティングで、これは「流れ」ではなく残りカードの構成という実体のある情報。
勝っているうちにやめれば勝てるやめ時は総期待値に影響しない。各ハンドの期待値がマイナスなら、プレー回数を減らすことだけが損失を減らす(=そもそもやらない、が最善という結論になる)。
20でスプリットして稼ぐ10,10 の期待値は +0.64 で全ハンド中トップクラス。分けると 2ハンドとも +0.5 前後に落ちる。勝っている手を壊す典型。
ディーラーもバーストするから五分プレイヤーが先にバーストして負けが確定する非対称性があるため、五分にはならない。両者バーストの約8%がまるごとハウスの取り分。

位置づけ

ストレートもフラッシュも、本体のルールではない

ブラックジャック本体に「役」の概念はない。合計が21を超えずにディーラーより高ければ勝ち、それだけ。ストレート・フラッシュ・スリーカードが出てくるのは サイドベット——本体とは別枠で、手前の別サークルに置く追加の賭けのこと。その代表が 21+3 で、これがポーカーの役を使う。

結論から言うと、サイドベットは本体より一桁不利。良条件の本体はハウスエッジ 約0.4%。サイドベットは最も良いもの(Flush の6デッキ版)で 1.70%、普及している21+3で 3.24% 以上、重いものは 17% を超える。1万円を本体に置いたときの期待損失が約40円なのに対し、ラッキーレディースなら約1,760円——44倍。基本戦略を完璧に覚えて削れる差は 0.5% 程度なので、サイドベットを1回置くだけでその努力は消える。

本命

21+3 — ストレート・フラッシュが出てくる賭け

名前の意味は「ブラックジャック(21)+ 3枚ポーカー」。自分の最初の2枚と、ディーラーのアップカード1枚、合わせて3枚で3カードポーカーの役を作る。ディーラーのホールカードも、その後に引くカードも一切関係ない。配られた瞬間に勝敗が決まる。

役の一覧(強い順・配当は BLOW と同じ標準版)

K♠K♠K♠
スーテッドトリップス
同じランク3枚が、スートまで全部同じ。複数デッキだから成立する。
100:1
8♥9♥10♥
ストレートフラッシュ
連続する3ランクが、スートも全部同じ。
40:1
7♠7♦7♣
スリーカード(トリップス)
同じランク3枚。スートはバラバラでよい。
30:1
5♠6♦7♥
ストレート
連続する3ランク。スートは不問。A は上下どちらにも使えるので A-2-3 も Q-K-A も成立。
10:1
2♦9♦K♦
フラッシュ
3枚が同じスート。ランクはバラバラでよい。当たりの大半はこれ。
5:1

ストレートがフラッシュより強いのが5枚ポーカーとの違い。3枚だけだと同スートを揃えるより連番を揃える方が難しいため、順位が逆転する。配当も必ずストレート > フラッシュになっている。

もう一方の枠

パーフェクトペア — 自分の2枚だけで決まる

21+3 と違い、ディーラーのカードは一切見ない。自分に配られた最初の2枚がペアかどうか、それだけ。ペアの「揃い方」が良いほど配当が上がる3段階構成。

3つの段階(配当は BLOW の卓と同じ)

A♠A♠
パーフェクトペア
ランクもスートも完全に同じ。1デッキでは物理的に不可能で、複数デッキだから起きる。
25:1
A♠A♣
カラードペア
ランクが同じで色も同じだが、スートは違う。黒なら ♠と♣、赤なら ♥と♦ の組み合わせ。
12:1
A♠A♥
ミックスペア
ランクが同じで色が違う。片方が黒、片方が赤。当たりの中では最も出やすい。
6:1
J と Q はペアにならない。ブラックジャック本体では J・Q・K・10 はすべて「10点」として同じ扱いだが、パーフェクトペアが見ているのは点数ではなくランク。K と Q が来ても、合計20で本体は強い手でも、このサイドベットは負け。K と K のようにランクが一致して初めて当たる。

ペアが出る確率は デッキ数によって変わる。同じ配当表でもデッキが多いほどプレイヤー有利になる——本体とは逆の動き方をする。以下は BLOW と同じ 25 / 12 / 6 の配当で計算したもの。

デッキパーフェクトカラードミックスペアが出る確率ハウスエッジ
87/4158/41516/4157.47%4.10%
65/3116/31112/3117.40%6.11%
43/2074/2078/2077.25%10.14%
21/1032/1034/1036.80%22.33%
10/511/512/515.88%47.06%

ペアが出る確率自体はほぼ変わらない(7.4%前後)のに、ハウスエッジは 4.10% → 6.11% と1.5倍に開く。効いているのは2つの小さな差が同じ方向に重なること——ペアの出る確率が 7.47%→7.40% に下がり、同時に当たった1回あたりの平均配当も 11.84倍→11.70倍 に下がる(配当の高いパーフェクトの取り分が減るため)。この賭けは元々ほぼ均衡に近いので、わずかな目減りが取り分の差として大きく出る。1デッキだとパーフェクトペアが原理的に出ないため 47% という別次元の不利さになり、少デッキ台では絶対に置いてはいけない賭けになる。(8デッキ 4.10% は Wizard of Odds の Pay Table A と一致。他は同じ配当表から算出)

最重要

同じ「21+3」でも版によって4倍不利になる

21+3 は配当表が何種類も流通していて、テーブルの表示を見ないと自分がどれを打っているか分からない。ハウスエッジは最良 3.24% から最悪 13.39% まで開く。数値は Wizard of Odds の解析による。

版ハウス
エッジ
デッキスーテッド
3カード
ストレート
フラッシュ
3カードストレートフラッシュ
原型(全役一律)3.24%6—9:19:19:19:1
現行の標準的な版3.70%6100:140:130:110:15:1
SF35・トリップス334.14%6100:135:133:110:15:1
スリーカード25の版6.29%7100:140:125:110:15:1
21+3 Xtreme13.39%6—30:120:110:15:1
見分けるポイントは スリーカードとストレートフラッシュの配当。ここが 30:1 / 40:1 なら許容範囲、20:1 / 30:1 なら Xtreme 版で圧倒的に不利。ストレート10:1・フラッシュ5:1 はどの版もほぼ共通なので、判別には使えない。

同族

「3枚ポーカー」の賭けは、名前を変えて何種類も置かれている

21+3 だけを覚えても足りない。自分の2枚+アップカードで役を作るという同じ構造の賭けが、カジノや機種ごとに違う名前で存在する。中身は配当表だけが違う。

名前配当ハウスエッジ備考
FlushSF 30 / 3カード 20 / ストレート 10 / フラッシュ 71.70%
6デッキ
フラッシュに7:1 と厚く払う版。本資料で扱う全サイドベット中で最も軽い。1デッキだと12.81%まで悪化するので多デッキ台限定。
Straight 2 Flush4役すべて 9:13.24%
6デッキ
21+3 の原型と同じ構造・同じ数値。8デッキなら 2.74% まで軽くなる。
21+3版により 100/40/30/10/5 など3.24〜13.39%最も普及。版の差が最大4倍(下の表を参照)。
Tri Lux / C3 / Hot 3 / Top 3機種ごとに異なる—いずれも同じ3枚を使う。名前が違っても配当表を見れば同族と分かる。
同族なので見るべき所は常に同じ——「フラッシュに何倍つくか」「スリーカードとストレートフラッシュに何倍つくか」。フラッシュが 5:1 なら標準的な21+3、7:1 なら当たり(Flush版)、スリーカードが 20:1 まで下がっていたら Xtreme 系で大きく不利。

全体像

種類は60を超える。だが構造は4系統しかない

Wizard of Odds が解析しているものだけで 64種類。カジノごとの独自版まで含めればさらに増える。ただし「何枚のどのカードで勝敗が決まるか」で分類すると4つしかない。この4系統さえ掴めば、名前を知らないサイドベットに出会っても構造は読める。

系統判定に使うカード代表例性質
A. 自分の2枚型 自分の最初の2枚だけ パーフェクトペア/ロイヤルマッチ/スート・エム・アップ/ラッキーレディース/オーバー・アンダー13 最も種類が多い。ディーラーは無関係で、配られた瞬間に確定する。
B. 3枚型 自分の2枚+ディーラーのアップカード 21+3/ラッキーラッキー/マッチ・ザ・ディーラー/Hot 3/Tri Lux 役や合計を作る。ホールカードは使わない。これも配られた瞬間に確定。
C. ディーラーの結末型 ディーラーの最終的な手 バスターブラックジャック/バストボーナス/EZ Bust/インシュランス ハンドが終わるまで結果が出ない。自分の手とは独立。
D. 展開型 3枚目以降・連勝・累積 スーパーセブン/Streak/House Money/Blazing 7's/プログレッシブ 高額配当を謳うものが多く、その分ハウスエッジも重い傾向。

A と B は配られた瞬間に勝敗が決まるため、本体のプレー判断(ヒットするか等)に一切影響されない。逆に言えば、サイドベットを置いたからといって本体の打ち方を変える理由はない。

個別

テーブルでよく見る顔ぶれ

パーフェクトペア

自分の最初の2枚がペアかどうかに賭ける。ディーラーは無関係。

  • パーフェクトペア — ランクもスートも完全一致(♠A と ♠A)
  • カラードペア — 同ランク・同色だが別スート(♠A と ♣A)
  • ミックスペア — 同ランク・色違い(♠A と ♥A)

配当は 25:1 / 15:1 / 5:1 あたりが標準で、8デッキのハウスエッジは版により 2.17%〜7.95%。Evolution 系のライブカジノ版は 8.05% 以上と重い。デッキ数が少ないと極端に不利になる(2デッキで48%という版もある)。

ラッキーラッキー

21+3 と同じ3枚(自分2枚+アップカード)だが、役ではなく合計で判定する。

  • スーテッド 7-7-7 → 200:1
  • スーテッド 6-7-8 → 100:1
  • 7-7-7(スート不問)→ 50:1
  • 6-7-8(スート不問)→ 30:1
  • 合計21・同スート → 15:1/不問 → 3:1
  • 合計20 → 2:1/合計19 → 2:1

6デッキ・この配当表でハウスエッジ 2.66%。主要サイドベットの中では最も軽い部類。版によっては 12.60% まで悪化する。

バスターブラックジャック

ディーラーがバーストするかに賭ける。バーストに使った枚数が多いほど高配当。

  • 8枚以上 → 250:1
  • 7枚 → 50:1/6枚 → 15:1
  • 5枚 → 4:1/3〜4枚 → 2:1

6デッキ・H17 でハウスエッジ 6.21%。ディーラーのバースト率は約28%あるので当たりやすく感じるが、その大半は2:1の最低配当。

ロイヤルマッチ

自分の最初の2枚が同スートかどうか。フラッシュ系の最も単純な形。

  • ロイヤルマッチ — 同スートの K と Q
  • イージーマッチ — 同スートの任意の2枚

25:1 / 2.5:1 の版は6デッキで 6.67% と重い。一方 10:1 / 3:1 の版は多デッキだと理論上プレイヤー有利(6デッキで −1.11%)という珍しい例。ただしこの版はまず置かれていない。

スート・エム・アップ

自分の2枚が同スートなら勝ち。ランクの組み合わせで配当が変わる。

  • 同スートのA2枚 → 60:1
  • 同スートのブラックジャック → 10:1
  • 同スートのペア → 5:1/同スートで合計11 → 3:1
  • その他の同スート → 2:1

8デッキで 2.67%、6デッキで 3.41%。サイドベットの中では最も軽い部類。2デッキだと 9.41% まで悪化するので、シューゲーム専用と考えてよい。

マッチ・ザ・ディーラー

自分の2枚のどちらかが、ディーラーのアップカードと同じランクなら勝ち。2枚とも一致・スートまで一致だと配当が上がる。

  • 6デッキ: スート一致 11:1/ランクのみ 4:1
  • 8デッキ: スート一致 14:1/ランクのみ 3:1

ハウスエッジは 3.31%(2デッキ)〜4.84%(4デッキ)。デッキ数と配当表が連動して設定されているため、他のサイドベットのような「デッキが多いほど有利」という単純な関係にならない。

オーバー/アンダー13

自分の最初の2枚の合計が13より上か下かに賭ける。Aは常に1点。ちょうど13はどちらの賭けも負け——ここが胴元の取り分。

  • どちらも配当は 1:1(イーブンマネー)
  • オーバー13 → ハウスエッジ 6.55%(6デッキ)
  • アンダー13 → ハウスエッジ 10.07%(6デッキ)

1980年代からある最古級のサイドベット。カウンティングに極端に弱く、それが理由でほとんどのカジノから消えた。詳細は下の「カウンティングとサイドベット」を参照。

ラッキーレディース

自分の最初の2枚の合計が20なら勝ち。クイーンのペア、とくにハートのQのペアが最高配当。

  • ♥Qペア + ディーラーがブラックジャック → 1000:1
  • ♥Qペア → 200:1
  • ランクもスートも一致の20 → 25:1
  • 同スートの20 → 10:1/不問の20 → 4:1

6デッキでハウスエッジ 17.64%。1000:1 の見出しが目を引くが、主要サイドベットの中で最悪の部類。20は作りやすいのに配当が4:1しかないのが効いている。

スーパーセブン

自分の最初の3枚で7を集める。1枚目が7の時点で当たり。

  • 同スートの 7-7-7 → 5000:1
  • 7-7-7 → 500:1
  • 同スートの 7-7 → 100:1/7-7 → 50:1
  • 7が1枚 → 3:1

6デッキで 11.40%(3枚目が保証される版)。5000:1 という数字はサイドベット全体でも最大級だが、ハウスエッジもそれに見合って重い。最高配当の派手さと不利さは概ね比例する。

一覧

不利さの順に並べる

主要サイドベットをハウスエッジの軽い順に。同じ賭けでも配当表の版とデッキ数で大きく動くため、代表値と幅の両方を示した。数値は Wizard of Odds の解析による。

系統賭け何で決まるか代表値版・デッキによる幅
—本体(基本戦略・良条件)自分の判断とテーブルのルール0.4%0.4〜1.8%
BFlush3枚ポーカーの役(フラッシュ7:1)1.70%1.70〜12.81%
Aパーフェクトペア自分2枚がペアか2.17%2.17〜13.03%
Bラッキーラッキー3枚の合計が19/20/212.66%2.66〜12.60%
Aスート・エム・アップ自分2枚が同スート2.67%2.67〜10.16%
B21+33枚ポーカーの役3.24%3.24〜13.39%
BStraight 2 Flush3枚ポーカーの役(全役9:1)3.24%2.74〜13.30%
Bマッチ・ザ・ディーラー自分の札がアップカードと同ランク3.31%3.31〜4.84%
Cバスターブラックジャックディーラーのバースト枚数6.17%6.17〜6.89%
Aオーバー13自分2枚の合計が13超6.55%6.54〜6.79%
Aロイヤルマッチ自分2枚が同スート/KQ6.67%6.46〜10.86%
Cインシュランスホールカードが10札か7.40%6デッキ・カウント無し
Aアンダー13自分2枚の合計が13未満10.07%10.06〜10.11%
Dスーパーセブン最初の3枚で7を集める11.40%9.01〜16.97%
Aラッキーレディース自分2枚の合計が2017.64%16.73〜24.94%

系統の A〜D は上の分類表に対応。インシュランスの計算は 04 確率と期待値 を参照。最も軽い Flush(1.70%)でも本体の4倍以上不利で、この関係は逆転しない。

判断

初めて見るサイドベットの読み方

64種類すべてを覚える必要はない。数値を知らない賭けに出会ったとき、テーブルの表示だけで当たりをつける手がかりが3つある。

  1. 最高配当が派手なほど不利。1000:1 のラッキーレディースは17.64%、5000:1 のスーパーセブンは11.40%。一方、最高配当が 60:1 のスート・エム・アップは2.67%。宣伝文句になっている数字が大きいほど、そこに金が寄せられて他が薄くなっている。
  2. 「作りやすい役」の配当が低いものは重い。ラッキーレディースの「合計20」は頻繁に起きるのに 4:1 しかつかない。当たりの大半を占める最低配当の水準が、ハウスエッジをほぼ決めている。
  3. デッキ数との関係を確認する。同ランク・同スートの重複を要求する賭け(ペア系・21+3・スート系)はデッキが多いほど player に有利で、本体とは逆に動く。2デッキ台のパーフェクトペアが48%というような極端な例もあるので、少デッキ台でサイドベットを置くのは避ける。

それでも判断がつかないなら置かない、で問題ない。サイドベットを置かないことによる損失はゼロで、本体のハウスエッジは何も変わらない。

照合

配当表の行数から正体を特定する

フェルトに名前が書かれていない、または見慣れない名前でも、印字された配当の行の中身を見れば正体が分かる。5行構成のサイドベットは特に多い。左右に円が1つずつあり、それぞれ5行——という配置なら、片方はほぼ確実に 21+3 系(役がちょうど5つなので)。

正体5行の中身(上から)行数
21+3(3枚ポーカー系)スーテッド3カード / ストレートフラッシュ / 3カード / ストレート / フラッシュ5
スート・エム・アップ同スートのA2枚 / 同スートのBJ / 同スートのペア / 同スートで合計11 / その他の同スート5
ラッキーレディース♥Qペア+ディーラーBJ / ♥Qペア / ランクもスートも一致の20 / 同スートの20 / 任意の205
バスターブラックジャック8枚以上 / 7枚 / 6枚 / 5枚 / 3〜4枚(ディーラーのバースト枚数)5
スーパーセブン同スート777 / 777 / 同スート77 / 77 / 7が1枚5
パーフェクトペアパーフェクトペア / カラードペア / ミックスペア3
Flush(3枚ポーカー系)ストレートフラッシュ / 3カード / ストレート / フラッシュ4
ロイヤルマッチロイヤルマッチ(同スートKQ)/ イージーマッチ(同スート2枚)2
ラッキーラッキースーテッド777 / スーテッド678 / 777 / 678 / 同スート21 / 21 / 20 / 197〜8
「ストレート」と「フラッシュ」の行があれば3枚ポーカー系——21+3 か Flush か Straight 2 Flush かのどれか。「20」や「ペア」の行があれば自分の2枚だけで決まる系。この2つを見分けるだけで、その賭けが何を見ているかは確定する。

よくある疑問

サイドベットに「降りる」は存在しない

本体にはサレンダーがあり、ヒットするかスタンドするかの判断もある。つまりカードを見てから軌道修正できる。サイドベットにはそれが一切ない。チップを置いた瞬間に、あとは配られるのを待つだけ。

系統いつ決着するか置いた後の選択肢
A. 自分の2枚型
パーフェクトペア等
2枚配られた瞬間なし。降りる・追加する・引く、いずれも不可。
B. 3枚型
21+3 等
アップカードが開いた瞬間なし。
C. 結末型
バスター等
ディーラーの手が終わったときなし。待つだけで、途中で降りることはできない。
インシュランスホールカードを開いた瞬間アップカードを見てから置くかどうかを決められる唯一の例外。ただし置いた後はやはり選択肢なし。
本体をサレンダーしても、サイドベットは戻ってこない。16対10 で降りて本体の半額を回収しても、21+3 とパーフェクトペアはカードが配られた時点で既に決着しているので無関係。半額戻るのは本体のベットだけ。

本体の「降りる勇気」— これは大事

6デッキ・S17 で該当局面をシミュレーションすると 4.96%=約20ハンドに1回。1時間に3〜5回は来る計算で、決して珍しくない。

  • 16 対 9・10・A — 2.74%(約36ハンドに1回)
  • 15 対 10 — 2.21%(約45ハンドに1回)
  • 17 対 A — 0.46%(H17台のみ)

どれも「まだ勝てるかも」と感じる手なので、降りるには確かに勇気が要る。だがここは降りた方が損が小さいと計算で確定している場面。

サイドベットの「置かない勇気」— 出番は毎ハンド

サイドベットで判断できるのは置く前の一度きり。だから使うのは「降りる勇気」ではなく「置かない勇気」で、こちらは毎ハンド問われる。

しかも降りるコストがゼロという点で、本体のサレンダーより判断は簡単。半額失うサレンダーと違い、置かなければ何も失わない。

「さっき21+3が来ていたのに置いていなかった」という後悔が一番の敵だが、それは結果論。置き続けた場合の期待値は変わらずマイナスのまま。

上級者向けの補足

カウンティングとサイドベット

サイドベットは本体より不利だが、特定のカードの偏りに強く依存するため、条件が揃えば本体より大きく有利に振れる。アドバンテージプレイの文脈ではむしろ本命になることがある。

  • 21+3 — 同ランク・同スートの残り枚数に依存する。Hi-Lo は無力で、スート別の専用カウントが必要。実戦では負荷が高い。
  • ラッキーラッキー — 6・7・8 の残存で大きく動く。Hi-Lo とは別系統の専用カウントが有効。
  • パーフェクトペア — 残りデッキ数そのものに依存する。シューの終盤ほど有利に傾く。
  • インシュランス — 10札の比率だけで決まるので、Hi-Lo がそのまま使える。唯一、通常のカウントで実用になるサイドベット(TC +3 以上で取る)。
  • オーバー/アンダー13 — 小さい札と大きい札の比率がそのまま結果になるため、カウントとの相性が構造的に良すぎた。カウンターに突かれて、ほとんどのカジノから撤去されたという歴史そのものが、サイドベットの脆さを示す事例になっている。Aを低札として扱う専用カウントが有効で、Hi-Lo を使う場合はカウントが非常に高いときだけオーバーに賭ける。

サイドベットは1回あたりの分散が本体より遥かに大きい。有利な局面でも資金の振れ幅は跳ね上がるので、08 資金管理 のバンクロール計算はそのままでは使えない。

例外

役が本体ルールに組み込まれている変種

スパニッシュ21 は、サイドベットではなく本体のルールとしてボーナスを持つ。10札(絵札ではなく数字の10)が全部抜かれた48枚デッキを使う代わりに、以下が本体の配当としてつく。

  • 5枚で21 → 3:2/6枚で21 → 2:1/7枚以上で21 → 3:1
  • 6-7-8 または 7-7-7 の21 → スート不問 3:2/同スート 2:1/すべてスペード 3:1
  • プレイヤーの21は常に勝ち(ディーラーの21に負けない)、プレイヤーのブラックジャックも常に勝ち

「6-7-8」がストレートに見えるが、これはポーカーの役ではなく合計21の作り方に対するボーナス。10札が抜けている分だけ本体は不利になっており、これらのボーナスはその埋め合わせ。基本戦略も通常のブラックジャックとは別物になる。

原理

残りのカードが偏れば、有利不利も偏る

ブラックジャックはシャッフルまでカードを戻さない。だから序盤に小さい札が大量に出れば、残りは10とAが濃くなる。この状態はプレイヤーに有利で、理由は3つある。

  • ブラックジャックが増える — 出やすくなるのは双方同じだが、配当が 3:2 なのはプレイヤーだけ。ここが優位の中心。
  • ディーラーがバーストしやすくなる — 16以下から必ず引かされるディーラーは、大きい札が濃い状況で不利になる。プレイヤーは引かない自由がある。
  • ダブルとスプリットが当たりやすくなる — 10札が濃ければ、9・10・11 からのダブルが決まりやすい。

逆に小さい札が濃い局面はハウス有利。カウンティングとは「今どちらに偏っているか」を1つの数値で追い、有利なときだけベットを厚くする手法で、個々のカードを記憶する必要はない。

Hi-Lo

タグ付け

カードタグ意味
2 · 3 · 4 · 5 · 6+1小さい札が減った = プレイヤーに有利へ傾く
7 · 8 · 90数えない
10 · J · Q · K · A−1大きい札が減った = ハウスに有利へ傾く

見えたカードすべてを足していく。これがランニングカウント(RC)。1デッキ分すべて出れば合計はちょうど 0 に戻る(バランス型と呼ばれる所以)。慣れると 2枚同時に見て打ち消し合う組(+1と−1)を消していけるので、実際の負荷は見た目ほど高くない。

変換

トゥルーカウント

トゥルーカウント(TC) = ランニングカウント ÷ 残りデッキ数

RC が +6 でも、残り6デッキならほぼ無意味(TC = +1)だが、残り1.5デッキなら強い有利(TC = +4)。同じ偏りでも、残り枚数が少ないほど濃度が高いという当たり前の補正。残りデッキ数はディスカードトレイ(使用済みカードの山)の厚みを目測して推定する。

トゥルーカウントプレイヤーの優位(概算)状況
−2 以下−1.5%強くハウス有利。ミニマムで流すか、席を立つ。
0−0.5%シャッフル直後の中立。基本戦略どおりのハウスエッジ。
+10.0%おおよその損益分岐点。
+2+0.5%ここから優位。
+3+1.0%インシュランスが有利に転じる境目。
+5+2.0%最大ベットを置く水準。

目安として トゥルーカウント +1 ごとに約 0.5% ずつ有利になる。基準(TC 0 で −0.5%)は台のルール次第で上下するので、H17・6:5 の台では損益分岐点がさらに上にずれる。

ベッティング

ベットスプレッド

優位はごく薄いので、不利なときに小さく、有利なときに大きく張らないと利益にならない。6デッキ・ペネトレーション75%での典型的なランプの例。

トゥルーカウントベット備考
+1 以下1 ユニットテーブルミニマム。時間の大半はここ。
+22 ユニット—
+34 ユニット—
+46 ユニット—
+5 以上8〜12 ユニット上限は資金とヒートの許容範囲で決める。
6デッキで利益を出すには 最低でも 1:8 程度のスプレッドが必要とされる。1:4 では実質ブレイクイーブン、1:2 では優位が出ない。逆にスプレッドが大きいほど分散も跳ね上がり、必要な資金が増える。

ペネトレーションが最重要

同じルールでも、カットカードが浅い(50%)台と深い(80%)台では優位の出方がまったく違う。TC が高くなるのはシューの後半なので、後半を配らない台ではそもそも有利な局面が来ない。ルールが少し悪くてもペネトレーションが深い台の方が価値が高い。CSM 台は原理的に不可能。

ウォンギング(バックカウンティング)

席に着かず後ろで数え、TC が上がったときだけ参加する手法。理論上の効率は最も高いが、出入りが目立つ。途中参加を禁じる台(No Mid-Shoe Entry)も多い。座ったまま TC が下がったら最低ベットに落とす「ウォンアウトしない」運用の方が現実的。

精度がすべてを決める

優位は 1% 前後しかないため、カウントミスは即座に利益を消す。実戦投入前の目安は、1デッキを 25秒以内にノーミスで数え切れること、かつ会話しながら維持できること。TC への変換(割り算)と残りデッキ数の目測が、実戦で最初に崩れる部分。

ヒートと現実

カウンティング自体は違法ではないが、カジノは私企業として入場拒否・退店要求ができる(管轄によってはブラックジャックのみ禁止という形も)。極端なベット変動、TCと連動した明らかな増額、長時間の単独プレーは目立つ。実際の収益はスプレッド・ペネトレーション・プレー時間で決まり、1時間あたりの期待値は平均ベットの1%程度と地味なもの。

比較

他のカウンティングシステム

システムタグレベル特徴
Hi-Lo2-6:+1 / 7-9:0 / 10-A:−11最も普及。習得コストと性能のバランスが最良で、資料も最も多い。まずこれ。
KO
Knock-Out
2-7:+1 / 8-9:0 / 10-A:−11アンバランス型でトゥルーカウント変換が不要。割り算をなくせる代わりに、インデックスプレーの精度は落ちる。
Zen Count2,3,7:+1 / 4,5,6:+2 / 8,9:0 / 10:−2 / A:−12ベット判断とプレー判断の両方で Hi-Lo を上回る。負荷は明確に増える。
Omega II2,3,7:+1 / 4,5,6:+2 / 8:0 / 9:−1 / 10:−2 / A:02プレー判断の精度が高い。Aを数えないため、別途エースサイドカウントが必要。
Wong Halves2,7:+0.5 / 3,4,6:+1 / 5:+1.5 / 8:0 / 9:−0.5 / 10,A:−13ベット判断の精度は最高クラス。小数を扱うため実戦負荷が非常に高い。

上位システムが Hi-Lo に対して上乗せする期待値はおおむね 0.1〜0.2% 程度。実戦でのミス率の上昇がこれを簡単に食い潰すため、「Hi-Lo をノーミスで回す」方が「高性能システムを時々間違える」より強い、というのが定説。

インデックスプレイ

カウントによって基本戦略を上書きする

基本戦略は「デッキの構成が平均的なとき」の最適解。カウントが偏っていれば最適解も動く。その切り替え点(インデックス数)を覚えて打ち方を変えるのがインデックスプレイ。利益の大半はベット額の調整から来ており、インデックスの寄与はその上乗せだが、上位数個は費用対効果が非常に高い。

表の読み方 — 「トゥルーカウントがインデックス数以上なら、その行動を取る」。数値未満なら基本戦略どおり。負の数の場合も同じで、TC が −1 以上(−1, 0, +1…)なら実行する。以下は Hi-Lo・6デッキ・S17 前提。

最優先

まず覚える1つ

TC ≥ +3インシュランスを取る

インデックスプレイの中で単独で最も価値が高い。他のどの1手より期待値への寄与が大きく、判断も「アップカードがAのときだけ」と限定されるので実戦負荷も低い。逆に言えば、これ以外を1つも覚えなくても、これだけは覚える価値がある。

Illustrious 18

影響の大きい18手

影響度の大きい順。上から6つほどで、18個すべてを覚えた場合の効果の 8割前後に到達する。

#ハンド対インデックスTC がインデックス以上のとき未満のとき
1インシュランスA+3取る取らない
2ハード16100スタンドヒット
3ハード1510+4スタンドヒット
410,105+5スプリットスタンド
510,106+4スプリットスタンド
6ハード1010+4ダブルヒット
7ハード123+2スタンドヒット
8ハード122+3スタンドヒット
9ハード11A+1ダブルヒット
10ハード92+1ダブルヒット
11ハード10A+4ダブルヒット
12ハード97+3ダブルヒット
13ハード169+5スタンドヒット
14ハード132−1スタンドヒット
15ハード1240スタンドヒット
16ハード125−2スタンドヒット
17ハード126−1スタンドヒット
18ハード133−2スタンドヒット

Fab 4

サレンダーのインデックス

レイトサレンダーが使える台でのみ意味を持つ4手。TC がインデックス以上ならサレンダーする。

ハンド対インデックス未満のとき(基本戦略)
ハード1410+3ヒット
ハード15100サレンダー(基本戦略でも同じ)
ハード159+2ヒット
ハード15A+1ヒット(S17)/サレンダー(H17)

覚える順番

  1. インシュランス +3
  2. 16 対 10 が 0
  3. 15 対 10 が +4
  4. 12 対 3 が +2 / 12 対 2 が +3
  5. 10,10 対 5・6(+5 / +4)

ここまでで実用上ほぼ足りる。残りは高カウント時にしか発生しないか、頻度が低い。

注意点

  • インデックスはシステムとルールに紐づく。Hi-Lo 用の数値を KO や Omega II に流用してはいけない。
  • H17 台では 15 対 A・17 対 A まわりが変わる。
  • 10,10 のスプリットは非常に目立つ行動。実利は小さいので、ヒートを考えるなら見送る判断も合理的。
  • デッキ数が違うとインデックスもずれる。1〜2デッキ台では別表。

分散

優位より、揺れの方がずっと大きい

カウンティングで得られる優位はせいぜい 1%。一方、1ハンドあたりの標準偏差は約 1.15ユニット。つまりノイズが信号の100倍以上ある。資金管理とは、この揺れに飲み込まれて破産する前に長期の期待値が顕在化するまで生き延びるための設計のこと。

1.151ハンドの標準偏差(ユニット)
11.5100ハンドの標準偏差(ユニット)
≈1.31ハンドの分散

到達時間

N0 — 優位が揺れを追い越すまでのハンド数

N0 = 分散 ÷ 優位性²

期待利益が標準偏差と等しくなるまでのハンド数。「ここまでやって、ようやく実力と運が同じ大きさ」という地点であり、勝ちが保証される数ではない。

優位性N0(ハンド)実時間の目安
0.5%52,000約 700 時間
1.0%13,000約 180 時間
1.5%5,800約 80 時間
2.0%3,250約 45 時間

1時間あたり約70〜80ハンド(フルテーブル)で換算。1% の優位でも、実力が運を上回るのに180時間かかる。1回の旅行や1晩の結果は、優位の有無と何の関係もない。

ベットサイズ

ケリー基準

最適ベット = 資金 × 優位性 ÷ 分散

例: 資金100万円、優位1%、分散1.3 → 1万円 ÷ 1.3 ≒ 7,700円。これがフルケリー。実務では変動が激しすぎるため ハーフケリー(半分)にするのが一般的で、期待成長率は 3/4 に落ちる代わりに、資金が半減する確率が大きく下がる。

フルケリーでも、途中で資金が半分になる確率はおよそ 1/2。「破産はしないが、半分にはよくなる」水準だと理解しておく。

破産確率

必要なバンクロール

1ユニット固定・優位1%・分散1.3 でプレーし続けたときの破産確率(RoR ≒ exp(−2 × 優位 × 資金 ÷ 分散))。資金はユニット数。

バンクロール破産確率評価
100 ユニット21%5人に1人が飛ぶ。短期の遊びなら許容範囲だが、継続には向かない。
200 ユニット4.6%—
300 ユニット1.0%一般に推奨される最低ライン。
500 ユニット0.05%実質的に破産しない。
スプレッドを使う場合、上の「ユニット」は最大ベットで数える。1:8 のスプレッドでミニマム1,000円(最大8,000円)なら、300ユニット = 240万円。ここが、カウンティングが「知識の問題」ではなく「資本の問題」である理由。

優位がない場合の資金管理

基本戦略のみ(=期待値マイナス)なら、どんな資金管理をしても長期の結果はマイナスに収束する。資金管理は損失を減らすのではなく、遅らせるだけ。この場合に意味があるのは「使ってよい金額を先に決め、それ以上は持ち込まない」という一点に尽きる。

時間あたりの期待値

1時間の期待値 = ハンド数 × 平均ベット × 優位性。100ハンド/時、平均ベット5,000円、優位1% なら 5,000円/時。この数字の周りを、標準偏差約6万円で毎時間振れる。1晩の勝ち負けが実力を語らないのはこのため。

コンプの扱い

ホテル・食事・リベートは実質的な収益。優位がわずかにマイナスでも、コンプ込みでプラスになる設計はあり得る。ただし高いベットを長時間打つことが条件になるため、分散は増える。

資金は分離する

生活資金と混ぜた時点で、正しいベットサイズを維持できなくなる。ケリー基準は「その資金を失っても意思決定が変わらない」ことが前提で、この前提が崩れると数式ごと無効になる。

テーブルで

ハンドシグナル

意思表示は手の動作で行うのが正式。天井カメラが記録しており、揉め事はこの映像で判定されるため、口頭だけでは不十分。シューゲーム(カード表向き)とピッチゲーム(カード裏向き・手に持つ)で作法が違う。

アクションシューゲーム(表向き)ピッチゲーム(手に持つ)
ヒット指でテーブルを軽く2回叩く、または手前に掻く動作。持っているカードでテーブルを軽く擦る。
スタンド手のひらを下にして、テーブルの上で水平に振る。カードをベットの下に差し込む。
ダブルベットの横に同額のチップを置き、指を1本立てる。同上+カードを表向きに出す。
スプリットベットの横に同額を置き、指を2本立てる(V字)。同上。
サレンダーテーブルにカードの後ろで横に一直線を引く動作+口頭で「サレンダー」。—
ダブル/スプリットの追加チップは、必ず元のベットの横に置く。上に重ねるとベットの増額(不正)と見なされる。カードが配られた後に元のベットに触れないこと。

作法

テーブルマナー

やること

  • 現金はディーラーに手渡さず、テーブルの上に置く。「チェンジ」と言えばチップに替えてくれる。
  • 着席はラウンドの切れ目で。カードが配られている最中に割り込まない。
  • チップは大きい額を下、小さい額を上に積む。
  • 席を外すときは「マーク(マーカー)お願いします」と伝えると席を確保してもらえる(時間制限あり)。
  • 写真撮影・携帯電話はテーブルでは基本的に禁止。

やらないこと

  • シューゲームでカードに触る(表向きに配られたカードは触らない)。
  • 他人のプレーに口を出す。特にサードベースの人を責めるのは最も嫌われる。
  • ベット確定後にチップを動かす。
  • 飲み物をテーブルのフェルト上に置く(専用のホルダーがある)。
  • ディーラーに「どうすればいい?」と聞き続ける。基本戦略カードを持ち込む方が確実で、多くのカジノで持ち込み自体は認められている。

動画でよく見るあれ

トーク — ディーラーへのチップ

海外の実店舗で広く定着した習慣で、英語では toke。義務ではなく、渡すかどうかは完全にプレイヤーの裁量。ディーラー側から要求することはできない。渡し方が2種類あり、動画で場が盛り上がっているのはたいてい後者。

1. 直接渡す(ハンドイン)

チップを差し出す、または賭けエリアの外に置く。ディーラーはそれを受け取り、テーブル脇のトークボックスに入れる。

単純な現金の贈与。その手の勝敗とは無関係に確定する。

2. 一緒に賭ける(ベット・フォー・ザ・ディーラー)

自分の賭けエリアの外側にチップを置く。「あなたの分も一緒に賭けます」という意味で、その手が勝てばディーラーは倍になったチップを受け取れる。負ければ没収。

ディーラーと利害が一致するので場の空気が一体になる。動画で盛り上がっているのはこれ。

相場と運用

  • 一般的には勝ち額の数%、または良い手が出たときに数枚程度
  • 店によっては個人の懐ではなく全ディーラーで山分け(トーク・プール)にする方式
  • 置く位置は店の慣習によって違うので、迷ったらディーラーに置き場所を聞いてよい
  • 国や店によってはチップ文化がない、あるいは受け取りを禁止しているところもある
日本のアミューズメントカジノにこの習慣はない。金銭の授受そのものが問題になるため、トークを渡す場面は存在しない。これは海外(ラスベガス・マカオ・韓国・シンガポール等)の話。

国内で打つ場合

アミューズメントカジノでは、この資料の結論が反転する

国内のアミューズメントカジノはノーレート=金銭を賭けない。この一点で、本資料の期待値の議論はそのまま当てはまらなくなる。ハウスエッジ何%という「損失」が、そもそも発生しないからだ。

サイドベットを置かない理由が消える。「本体より一桁不利だから置くな」という結論は、失う金があって初めて成立する。ノーレートなら 21+3 でもラッキーレディースでも好きに置いてよい。むしろ役の成立頻度を体感できるので、海外で打つ前の予習としては置いた方が学べる。

その店の配当表は、本資料の数値と一致しないことがある

アミューズメント店は独自フェルト・独自配当を使っていることが多く、解析されている標準版とは別物の場合がある。本資料のハウスエッジは「海外の実店舗に行ったときのための知識」として読むのが正しい。

配当表の行の中身から正体を特定する方法は 05 サイドベット の照合表にまとめてある。5行構成で「ストレート」「フラッシュ」の行があれば 21+3 系で確定。

本番の練習台として使うなら、差分を確認する

  • S17 か H17 か — 基本戦略が6マス変わる
  • デッキ数 — 少デッキだと表そのものが変わる
  • ディーラーの手順 — ピークの有無、サレンダーの可否
  • カットカードの位置 — 浅いとカウント練習にならない
  • CSM を使っていないか — 使っていたらカウント練習は不可能

店のルールが本番と違うまま体に入れると、そのまま持ち込んで損をする。

逆に言えば、カウンティングの練習場としては理想的。金銭リスクゼロでランニングカウント→トゥルーカウントの変換を身体に入れられる場所は、国内ではここしかない。

実例

BLOW カジノの卓(フェルト実測)

全国展開のアミューズメントカジノバー BLOW の卓を、フェルトの印字から起こしたもの。配当表は2つとも解析済みの標準版と完全に一致していたので、ハウスエッジがそのまま確定できる。

テーブル条件

BJ の配当
3 TO 2。6:5 ではない良条件。
ソフト17
“Dealer must draw to 16 and stand on all 17” = S17。
インシュランス
PAYS 2 TO 1。標準。
ベット枠
メイン/パーフェクトペア(左)/21+3(右)/BET BEHIND(手前)の4つ。

S17 なので、03 基本戦略の表はそのまま使える(本資料は S17 が既定)。H17 の差分6マスは読み替え不要。デッキ数はフェルトからは分からないので、現地でシューを見て確認する。

BET BEHIND が公式に用意されている

各席の手前に BET BEHIND の枠が印字されている=バックベットが正式対応の卓。席が埋まっていても、他の人の手に乗って参加できる。

ノーレートなので金銭的な損得はないが、「他人の判断に自分の結果を預ける」という感覚を練習できる数少ない機会。海外でバックベットを使う予定があるなら、ここでスプリット時の選択(両方に乗るか、1つ目だけか)を体験しておくとよい。詳細は 01 ルール のバックベットの節を参照。

サイドベット役配当ハウスエッジ
21+3
右の枠
スーテッドトリップス100:13.70%
6デッキの場合
ストレートフラッシュ40:1
スリーカード30:1
ストレート10:1
フラッシュ5:1
パーフェクトペア
左の枠
パーフェクトペア25:14.10%
8デッキの場合
カラードペア12:1
ミックスペア6:1
21+3 は普及している標準版そのもの(Xtreme のような不利な版ではない)。パーフェクトペアは Wizard of Odds の Pay Table A に一致。どちらも「サイドベットとしては標準的」な水準で、極端に不利な卓ではない。ただしノーレートなので、BLOW で打つ限りこの数値は実損には結びつかない——海外の卓で同じ配当表を見たときの判断材料として使う。

位置づけ

法的な前提

  • 日本国内で金銭を賭けてブラックジャックを行うことは賭博罪(刑法185条)にあたる。国内でプレーできるのは、金銭の授受を伴わないアミューズメント(ノーレート)形式のみ。この資料は海外のカジノ、または金銭を賭けない場での知識として整理している。
  • 国内の統合型リゾート(IR)は法制度上は認められているが、施行状況は時期により変わるため、実際に行くときは最新の情報を確認する。
  • カウンティングは頭の中で数えているだけなので、それ自体は違法ではない。ただしカジノは私企業として入場拒否・退店要求・特定ゲームの禁止ができる。管轄によって扱いは異なる。
  • デバイス(機械・アプリ)を使ったカウントは多くの管轄で明確に違法。頭の中とデバイスの間に、法的には大きな線が引かれている。

オンラインカジノでカウントが効かない理由

通常のオンラインブラックジャック(RNG)は毎ハンドごとにシャッフルされるため、残りカードの偏りという概念自体が存在しない。ライブディーラー形式でも、多くはペネトレーションが50%程度と浅く、CSMを使う卓も多いため実用的な優位は生まれない。

基本戦略カードの持ち込み

多くのカジノでプラスチック製の基本戦略カードをテーブルに置いてよい。プレーが遅れない範囲であれば咎められないことがほとんど。記憶があいまいなまま打つより、見て正確に打つ方が確実に得。

座る位置

期待値には影響しない。ただしサードベース(最後)は最も多くのカードを見てからアクションできるため、カウンティング時は情報が1周分多く手に入る。逆に他プレイヤーからの視線と責任も集まる。

練習の順序

基本戦略をノーミスで打てるようになる → ルール別の差分を入れる → Hi-Lo のランニングカウント(1デッキ25秒) → トゥルーカウント変換 → 上位インデックス数個。順番を飛ばすと、カウントしながら基本戦略を間違えるという最悪の状態になる。