ブラックジャック リファレンス

4〜8デッキ / S17・H17 併記

前提

ディーラーと1対1で、21を超えずに勝つ

同じテーブルに何人座っていても、勝負は常に「自分 対 ディーラー」。隣のプレイヤーとは競っていない。ディーラーには裁量がなく、17以上になるまで引き続けるという固定手順しかない。だからこの手順を前提に、こちらの選択だけを最適化できる。それが基本戦略の正体。

3:2ブラックジャックの配当(良い台)
17ディーラーが引くのをやめる合計
0.4%良条件+基本戦略のハウスエッジ

カードの数え方

2 〜 10
数字どおり。
J / Q / K
すべて 10。デッキの13種のうち4種が10なので、約31%(4/13)が10札
A(エース)
1 または 11 のうち、その時点で有利な方。21を超えるなら自動的に 1 として扱われる。
スーツ
ブラックジャックでは一切意味を持たない。ハートもスペードも同じ。

ハードハンド
Aを含まない、またはAを11として使えない手。例: 10+6 = ハード16。A+5+9 = ハード15(Aを11にすると25でバーストするため)。
ソフトハンド
Aを11として数えられる手。1枚引いてもバーストしないのが最大の特徴。例: A+6 = ソフト17。
ブラックジャック
最初の2枚が A + 10札。合計21だが「21」とは別格で、3:2 の配当がつく。スプリット後にできた A+10 はブラックジャック扱いにならない(ただの21)。

1ハンドの進行

手順

  1. ベットを置く。カードが配られる前にベッティングサークルへチップを置く。以降このハンド中は元のベット額を減らせない。
  2. 配札。プレイヤーに2枚(表向き)、ディーラーに2枚。ディーラーの1枚は表(アップカード)、1枚は裏(ホールカード)。
  3. ブラックジャックのチェック。ディーラーのアップカードが A または 10札のとき、ホールカードを覗いて(ピーク)ブラックジャックかどうかを確認する。A のときはこの前にインシュランスの募集が入る。ブラックジャックなら即座に全員の負けが確定(プレイヤーもブラックジャックならプッシュ)。
  4. プレイヤーのアクション。ディーラーから見て左端(ファーストベース)から順に、ヒット/スタンド/ダブル/スプリット/サレンダーを選ぶ。21を超えた時点でバースト=ディーラーの手を見る前に負けが確定する。
  5. ディーラーのプレー。ホールカードを開き、16以下なら必ず引く/17以上なら必ず止まる。判断は一切入らない。ソフト17(A+6)を引くか止まるかは台のルール次第(S17 / H17)。
  6. 精算。ディーラーがバーストすれば、残っている全員の勝ち。バーストしなければ合計を比較して高い方の勝ち。同点はプッシュ(引き分け=ベット返却)。
手順4がすべての鍵。プレイヤーが先にバーストすると、その後ディーラーがバーストしても負けたまま。この非対称性がハウスエッジの主要な源で、ブラックジャック3:2の配当・ダブル・スプリットはその埋め合わせとして与えられている。

プレイヤーの選択肢

使える手は6つだけ

アクション内容条件・注意
ヒット
Hit
カードを1枚引く。21を超えるまで何度でも。21を超えた瞬間にバースト。ディーラーの手番を待たずに負け。
スタンド
Stand
引くのをやめて手番を終える。
ダブルダウン
Double Down
ベットを倍にして、ちょうど1枚だけ引いて手番終了。最初の2枚のときのみ。多くの台はどの2枚でも可(Double on Any 2)だが、9〜11のみ・10〜11のみに制限する台もある。スプリット後にダブルできるかは DAS ルール次第。
スプリット
Split
同じ数字のペアを2つのハンドに分け、同額を追加ベットして両方をプレーする。通常3回まで(=最大4ハンド)。Aのスプリットは各1枚ずつしか引けず、追加ヒット不可の台がほとんど。A分割後の A+10 はブラックジャック扱いにならない。10とKなど「どちらも10」を分けられるかは台次第。
サレンダー
Surrender
降りてベットの半額を返してもらう。採用していない台も多い。通常は「レイトサレンダー」=ディーラーのBJチェック後にのみ可能。最初の2枚のときだけ。使える場面は年に数えるほど少ないが、使うべき場面では確実に得。
インシュランス
Insurance
ディーラーのアップカードがAのとき、元ベットの半額までを「ディーラーがBJである」方に賭ける。当たれば2:1。原則として取らない。カウントしていない限り常に不利(詳細は「確率と期待値」)。自分がBJのときに提案される「イーブンマネー」も中身は同じ賭けなので同様に断る。

用語

テーブルで飛び交う言葉

用語意味
アップカードディーラーの表向きのカード。プレイヤーの全判断はこの1枚を軸に決まる。
ホールカードディーラーの裏向きのカード。
シュー複数デッキをまとめて入れる配札用の箱。4〜8デッキが一般的。
ピッチゲーム1〜2デッキを手で配る形式。プレイヤーがカードに触れてよい台が多い。
カットカードシューに差し込まれた色付きの板。これが出たらそのラウンド終了後にシャッフル。
ペネトレーションシャッフルまでに使われるカードの割合。75%なら6デッキ中4.5デッキが消化される。カウンティングの成否を左右する最重要要素。
ファーストベースディーラーから見て左端=最初にアクションする席。
サードベースディーラーから見て右端=最後にアクションする席。
S17 / H17ディーラーがソフト17(A+6)でスタンドするか(Stand)、ヒットするか(Hit)。プレイヤーにとってS17が有利
DASDouble After Split。スプリットした後のハンドでダブルできるルール。プレイヤーに有利。
RSARe-Split Aces。分けたAをさらに分けられるルール。プレイヤーに有利。
CSMContinuous Shuffling Machine。毎ラウンド戻して混ぜ続ける機械。カウンティングが完全に無効になる。
ノーホールカードディーラーが最初に1枚しか取らない方式(欧州系に多い)。ダブル/スプリット後にディーラーBJが判明すると追加分まで失う台がある(下記OBOでなければ不利)。
OBOOriginal Bets Only。ノーホールカード台で、ディーラーBJのとき失うのは元ベットだけというルール。実質的にホールカードありと同等。
トーク(トウク)ディーラーへのチップ。自分のベットの手前に置いて「一緒に賭ける」形が一般的。
ヒートカジノ側からの警戒・監視。

最初の意思決定

どう打つかより、どこに座るか

基本戦略を完璧に覚えても取り返せる差はせいぜい 0.5% 程度。ところが「ブラックジャックが 3:2 か 6:5 か」だけで 1.4% 動く。つまり台選びを間違えた時点で、戦略の努力は全部帳消しになる。座る前に見るべきものは決まっている。

6:5 の台には座らない。テーブルの表示(BLACKJACK PAYS 6 TO 5)で判別できる。1万円のベットでブラックジャックが出たとき、3:2 なら 15,000円、6:5 なら 12,000円。この1点だけでハウスエッジは約 0.4% から約 1.8% へ、4倍以上に跳ね上がる。

チェック順

座る前に確認する5項目

  1. ブラックジャックの配当 — 3:2 であること。6:5 や 1:1 は論外。ここだけは妥協しない。
  2. ディーラーのソフト17 — テーブルに「Dealer must stand on all 17s」(S17)とあれば良い台。「Dealer hits soft 17」(H17)なら 0.22% 不利。
  3. デッキ数 — 少ないほど有利。ただし少デッキ台は 6:5 とセットになっていることが多いので、必ず1と併せて見る。
  4. ダブルとスプリットの自由度 — 「どの2枚でもダブル可」「DAS可」「Aのリスプリット可」が揃っているほど良い。
  5. サレンダーの有無 — あれば +0.08%。小さいが無料でもらえる。

この他、カウンティングをするならペネトレーション(カットカードの深さ)とCSMの有無が最重要。CSM台はカウントが原理的に成立しない。

数値

ルールごとの期待値への影響

6デッキ・S17・DAS可・BJ 3:2・基本戦略を基準(ハウスエッジ 約0.45%)としたときの、各ルールの増減。プラスはプレイヤー有利、マイナスは不利。値は概算で、他ルールとの組み合わせで多少変動する。

ルール影響コメント
ブラックジャックが 6:5−1.39%単独で他のすべてを打ち消す。回避一択。
ブラックジャックが 1:1−2.27%もはや別ゲーム。
ディーラーが H17−0.22%マカオ・韓国・シンガポール等で標準的。
ダブルが 9〜11 のみ−0.09%ソフトハンドのダブルが封じられる。
ダブルが 10〜11 のみ−0.18%
DAS 不可−0.14%ペアの戦略が数箇所変わる。
スプリットが1回まで−0.10%
8デッキ → 6デッキ+0.02%
8デッキ → 2デッキ+0.19%
8デッキ → 1デッキ+0.48%ただし1デッキ台はほぼ 6:5。
レイトサレンダー可+0.08%
アーリーサレンダー可+0.6%現代ではほぼ絶滅。
A のリスプリット可+0.08%
A スプリット後にヒット可+0.19%珍しい好条件。
5枚チャーリー(5枚で自動勝ち)+1.46%まず見かけない。あれば座る価値あり。

組み合わせ

実在しやすい3タイプの台

良い台

6デッキ / S17 / DAS / LS / 3:2

0.4%ハウスエッジ

100回×1,000円ベットで理論損失 約400円。ラスベガスのストリップ高ミニマム卓やダウンタウンに残っている水準。

標準的な台

8デッキ / H17 / DAS / サレンダー無 / 3:2

0.7%ハウスエッジ

アジア圏のカジノで最もよく見る条件。基本戦略を守れば十分に遊べる範囲。

避ける台

6デッキ / H17 / 6:5

2.0%ハウスエッジ

低ミニマム卓に多い形。損失ペースは良い台の5倍。ミニマムが安くても座らない方が結果的に安い。

サイドベット(21+3、パーフェクトペア、ラッキーラッキー等)のハウスエッジはおおむね 2〜10%。本体の 0.4% とは桁が違う。カウンティングをしても本体のカウントとは連動しないため、期待値上の扱いは「別の不利なゲーム」。

基本戦略

自分の手 × ディーラーのアップカードで一意に決まる

基本戦略とは「この状況で最も損の少ない選択」をすべて計算し尽くした表のこと。直感や流れは一切関係なく、同じ状況なら常に同じ答えになる。以下は 4〜8デッキ・DAS可・レイトサレンダー可・Aスプリット後は各1枚 を前提とした表。

ディーラーのソフト17

ハードハンド

ソフトハンド(Aを11として使える手)

ペア(スプリットの判断)

ペアの表で「スプリットしない」と出た場合は、その合計をハード表(またはソフト表)で引き直す。例: 7,7 対 8 は「H」=ハード14として扱いヒット。

凡例

Hヒット Sスタンド Dダブル(不可ならヒット) Dsダブル(不可ならスタンド) Pスプリット Rサレンダー(不可ならヒット) Rsサレンダー(不可ならスタンド) Rpサレンダー(不可ならスプリット)

角に三角のあるマスは、S17 と H17 で答えが変わる箇所。上のトグルで切り替わる。

差分

H17 で変わるのは6箇所だけ

状況S17H17理由
ハード11 対 AヒットダブルH17ではディーラーのAが強くなりすぎるため、勝ちに行くよりベットを厚くする価値が上回る。
ソフト18(A,7)対 2スタンドダブルディーラーがソフト17から引き直す分だけバーストしやすくなる。
ソフト19(A,8)対 6スタンドダブル同上。6に対する優位が最も広がるハンド。
ハード15 対 AヒットサレンダーAの強さが増し、勝率が半額返還を下回る。
ハード17 対 AスタンドサレンダーH17のAに対する17は期待値が −0.5 を割り込む。
8,8 対 Aスプリットサレンダー分けた2つのハンドの合計期待値が半額返還より悪くなる。サレンダー不可ならスプリット。

ハード16 対 A のサレンダーは S17・H17 どちらでも同じ(サレンダー)。

記憶

覚える順番

上から順に、覚えた分だけ効果が出る並びにしてある。1〜4 だけでハウスエッジの大半は回収できる。

  1. 17以上は必ずスタンド。ハード17以上は例外なし(サレンダーが使える台のH17・対Aだけが例外)。
  2. ディーラーが 2〜6 なら 12〜16 でスタンド。ただし 12 対 2 と 12 対 3 だけはヒット。この2マスが唯一の例外で、間違えやすい。
  3. ディーラーが 7〜A なら 12〜16 はヒット。バーストが怖くても引く。止まっても負けるだけだから。
  4. A,A と 8,8 は常にスプリット。10,10 と 5,5 は絶対にスプリットしない。ここは無条件で覚える。
  5. 11 は常にダブル(S17でAが相手のときだけヒット)。10 は 2〜9 に対してダブル
  6. ソフト17(A,6)以下では絶対にスタンドしない。引いてもバーストしないので、止まる理由がない。
  7. ソフト18(A,7)は「9・10・A に対してはヒット」。18で止まりたくなるが、ここが最も損をしやすい判断。
  8. 最後にソフトハンドのダブル範囲と、細かいペアの分岐を詰める。

条件が違う台では

表を使うときの読み替え

DAS が無い台

  • 2,2 と 3,3 対 2・3 → スプリットせずヒット
  • 4,4 → どこでもスプリットしない(ヒット)
  • 6,6 対 2 → スプリットせずヒット

サレンダーが無い台

  • R(サレンダー)のマスはすべて代替アクションに読み替える。凡例の Rh=ヒット、Rs=スタンド、Rp=スプリット。
  • つまり 16 対 9・10・A はヒット、15 対 10 はヒット。

1〜2デッキの台

  • この表とは十数箇所ずれる(8,8 対 10 のサレンダー、11 対 A のダブル、ソフトダブルの範囲など)。
  • 少デッキ台に座るなら専用表を用意する。多デッキ表の流用は 0.1% 前後の追加損失になる。

ノーホールカード台(OBOでない)

  • ディーラーが 10 または A のとき、ダブル・スプリットで追加した分まで失う可能性がある。
  • 対 A・対 10 でのダブルとスプリットを控えめにする(11 対 10 はヒット、8,8 対 10・A はヒット等)。

根拠

なぜその表になるのか

基本戦略の各マスは「その選択をしたときの期待値」を全パターン計算して、最大のものを選んだ結果。勝率ではなく期待値で決まっていることが重要で、だから「勝率が低くてもこちらが正解」という手が普通に出てくる。

出発点

ディーラーのバースト率(アップカード別)

弱いアップカード(2〜6) 強いアップカード(7〜A)

6デッキ・S17・ディーラーがブラックジャックをチェックする台での概算値。この分布が基本戦略のほぼすべてを説明する — 2〜6 に対しては「引かずに待つ」、7〜A に対しては「自分で作りにいく」。7 と 6 の間の段差(約16ポイント)が、12〜16 の判断が真っ二つに割れる理由

なぜ 16 対 10 はヒットなのか

スタンドすると、ディーラーが 10 でバーストする確率は約 21%。つまり 約79%負ける。ヒットすると自分のバースト確率は約 62% だが、生き残った 38% のうちかなりが勝つ。計算すると期待値は スタンド −0.54 に対し ヒット −0.51。どちらも大きく負けるが、ヒットの方が損が小さい。サレンダーが使えるなら −0.50 で確定するのでそちらが最善。

なぜ 12 対 2 はヒットで、12 対 4 はスタンドなのか

12 でヒットしてバーストするのは 10札を引いたときだけ(約31%)。一方ディーラーの 2 はバースト率が 35% しかなく、待っても足りない。4 になるとバースト率が 40% まで上がり、待つ方が有利になる。12 だけは 2・3 に対してヒットという例外はここから来ている。13以上はバースト確率が上がるので 2 から待ちに転じる。

なぜ A,7(ソフト18)で 9・10・A に引くのか

18 は強そうに見えるが、ディーラーが 9・10・A で作る手の中央値は 19〜20。18 でスタンドすると期待値はマイナス。ソフトなので引いてもバーストせず、改善の余地しかない。「良さそうな手だから止める」は最も高くつく直感

なぜ 8,8 を 10 に対しても分けるのか

16 のまま戦うのは最悪のハンド(期待値 −0.54)。8 から2つ作り直せば、1ハンドあたりの期待値は −0.48 程度まで改善する。「負けを増やしに行く」ように見えて、実際は損失を減らす手。サレンダー(−0.50 で確定)と比べても −0.48 の方が良いので、8,8 対 10 はサレンダーせずスプリットが正解。H17 で対 A のときだけ、この関係が逆転してサレンダーになる。

インシュランス

「保険」ではなく、単体で不利な別ゲーム

ディーラーのアップカードが A のとき、ホールカードが 10札ならインシュランスは 2:1 で当たる。つまり 残りのカードの 1/3 超が10札なら得、それ未満なら損

条件10札の割合インシュランスの期待値
損益分岐点33.3%0
通常のデッキ構成30.8%(4/13)−7.7%
Hi-Lo のトゥルーカウント +3 以上33.3% 超プラス

結論: カウントしていないなら常に断る。自分がブラックジャックのときに提案される「イーブンマネー」(1:1で確定精算)も、数式上はインシュランスを取るのと完全に同一。3:2 を捨てて 1:1 を取る行為なので、同じく断る。カウントしている場合のみ、トゥルーカウント +3 以上で取る(インデックスプレイの中で最も価値が高い1手)。

誤解

よくある間違い

よく言われること実際
サードベースの人が下手だと全員が負ける長期的には無関係。カードの並びを変えるだけで、他人のプレーが自分の期待値に与える影響はゼロに収束する。「あの人が引いたせいで」は結果論。
ディーラーのホールカードは10だと思え10札は 13種のうち4種、約31%。「10だと仮定する」は目安として便利だが、確率としては誤り。基本戦略はすでに正しい分布で計算されている。
バーストしそうだから引かない12〜16 対 7〜A は、引く方が損失が小さい。「バーストしたくない」という感覚が最大の損失源。
負けが込んだら倍賭けすれば取り返せる(マーチンゲール)テーブルリミットと資金の上限で必ず止まる。1回の破滅的な連敗ですべてを失う形に変換しているだけで、期待値は1ミリも改善しない。
ホットなテーブル/流れが来ているシャッフル後の各ハンドは独立。唯一の例外がカウンティングで、これは「流れ」ではなく残りカードの構成という実体のある情報。
勝っているうちにやめれば勝てるやめ時は総期待値に影響しない。各ハンドの期待値がマイナスなら、プレー回数を減らすことだけが損失を減らす(=そもそもやらない、が最善という結論になる)。
20でスプリットして稼ぐ10,10 の期待値は +0.64 で全ハンド中トップクラス。分けると 2ハンドとも +0.5 前後に落ちる。勝っている手を壊す典型
ディーラーもバーストするから五分プレイヤーが先にバーストして負けが確定する非対称性があるため、五分にはならない。両者バーストの約8%がまるごとハウスの取り分。

原理

残りのカードが偏れば、有利不利も偏る

ブラックジャックはシャッフルまでカードを戻さない。だから序盤に小さい札が大量に出れば、残りは10とAが濃くなる。この状態はプレイヤーに有利で、理由は3つある。

  • ブラックジャックが増える — 出やすくなるのは双方同じだが、配当が 3:2 なのはプレイヤーだけ。ここが優位の中心。
  • ディーラーがバーストしやすくなる — 16以下から必ず引かされるディーラーは、大きい札が濃い状況で不利になる。プレイヤーは引かない自由がある。
  • ダブルとスプリットが当たりやすくなる — 10札が濃ければ、9・10・11 からのダブルが決まりやすい。

逆に小さい札が濃い局面はハウス有利。カウンティングとは「今どちらに偏っているか」を1つの数値で追い、有利なときだけベットを厚くする手法で、個々のカードを記憶する必要はない。

Hi-Lo

タグ付け

カードタグ意味
2 · 3 · 4 · 5 · 6+1小さい札が減った = プレイヤーに有利へ傾く
7 · 8 · 90数えない
10 · J · Q · K · A−1大きい札が減った = ハウスに有利へ傾く

見えたカードすべてを足していく。これがランニングカウント(RC)。1デッキ分すべて出れば合計はちょうど 0 に戻る(バランス型と呼ばれる所以)。慣れると 2枚同時に見て打ち消し合う組(+1と−1)を消していけるので、実際の負荷は見た目ほど高くない。

変換

トゥルーカウント

トゥルーカウント(TC) = ランニングカウント ÷ 残りデッキ数

RC が +6 でも、残り6デッキならほぼ無意味(TC = +1)だが、残り1.5デッキなら強い有利(TC = +4)。同じ偏りでも、残り枚数が少ないほど濃度が高いという当たり前の補正。残りデッキ数はディスカードトレイ(使用済みカードの山)の厚みを目測して推定する。

トゥルーカウントプレイヤーの優位(概算)状況
−2 以下−1.5%強くハウス有利。ミニマムで流すか、席を立つ。
0−0.5%シャッフル直後の中立。基本戦略どおりのハウスエッジ。
+10.0%おおよその損益分岐点。
+2+0.5%ここから優位。
+3+1.0%インシュランスが有利に転じる境目。
+5+2.0%最大ベットを置く水準。

目安として トゥルーカウント +1 ごとに約 0.5% ずつ有利になる。基準(TC 0 で −0.5%)は台のルール次第で上下するので、H17・6:5 の台では損益分岐点がさらに上にずれる。

ベッティング

ベットスプレッド

優位はごく薄いので、不利なときに小さく、有利なときに大きく張らないと利益にならない。6デッキ・ペネトレーション75%での典型的なランプの例。

トゥルーカウントベット備考
+1 以下1 ユニットテーブルミニマム。時間の大半はここ。
+22 ユニット
+34 ユニット
+46 ユニット
+5 以上8〜12 ユニット上限は資金とヒートの許容範囲で決める。
6デッキで利益を出すには 最低でも 1:8 程度のスプレッドが必要とされる。1:4 では実質ブレイクイーブン、1:2 では優位が出ない。逆にスプレッドが大きいほど分散も跳ね上がり、必要な資金が増える。

ペネトレーションが最重要

同じルールでも、カットカードが浅い(50%)台と深い(80%)台では優位の出方がまったく違う。TC が高くなるのはシューの後半なので、後半を配らない台ではそもそも有利な局面が来ない。ルールが少し悪くてもペネトレーションが深い台の方が価値が高い。CSM 台は原理的に不可能。

ウォンギング(バックカウンティング)

席に着かず後ろで数え、TC が上がったときだけ参加する手法。理論上の効率は最も高いが、出入りが目立つ。途中参加を禁じる台(No Mid-Shoe Entry)も多い。座ったまま TC が下がったら最低ベットに落とす「ウォンアウトしない」運用の方が現実的。

精度がすべてを決める

優位は 1% 前後しかないため、カウントミスは即座に利益を消す。実戦投入前の目安は、1デッキを 25秒以内にノーミスで数え切れること、かつ会話しながら維持できること。TC への変換(割り算)と残りデッキ数の目測が、実戦で最初に崩れる部分。

ヒートと現実

カウンティング自体は違法ではないが、カジノは私企業として入場拒否・退店要求ができる(管轄によってはブラックジャックのみ禁止という形も)。極端なベット変動、TCと連動した明らかな増額、長時間の単独プレーは目立つ。実際の収益はスプレッド・ペネトレーション・プレー時間で決まり、1時間あたりの期待値は平均ベットの1%程度と地味なもの。

比較

他のカウンティングシステム

システムタグレベル特徴
Hi-Lo2-6:+1 / 7-9:0 / 10-A:−11最も普及。習得コストと性能のバランスが最良で、資料も最も多い。まずこれ。
KO
Knock-Out
2-7:+1 / 8-9:0 / 10-A:−11アンバランス型でトゥルーカウント変換が不要。割り算をなくせる代わりに、インデックスプレーの精度は落ちる。
Zen Count2,3,7:+1 / 4,5,6:+2 / 8,9:0 / 10:−2 / A:−12ベット判断とプレー判断の両方で Hi-Lo を上回る。負荷は明確に増える。
Omega II2,3,7:+1 / 4,5,6:+2 / 8:0 / 9:−1 / 10:−2 / A:02プレー判断の精度が高い。Aを数えないため、別途エースサイドカウントが必要。
Wong Halves2,7:+0.5 / 3,4,6:+1 / 5:+1.5 / 8:0 / 9:−0.5 / 10,A:−13ベット判断の精度は最高クラス。小数を扱うため実戦負荷が非常に高い。

上位システムが Hi-Lo に対して上乗せする期待値はおおむね 0.1〜0.2% 程度。実戦でのミス率の上昇がこれを簡単に食い潰すため、「Hi-Lo をノーミスで回す」方が「高性能システムを時々間違える」より強い、というのが定説。

インデックスプレイ

カウントによって基本戦略を上書きする

基本戦略は「デッキの構成が平均的なとき」の最適解。カウントが偏っていれば最適解も動く。その切り替え点(インデックス数)を覚えて打ち方を変えるのがインデックスプレイ。利益の大半はベット額の調整から来ており、インデックスの寄与はその上乗せだが、上位数個は費用対効果が非常に高い。

表の読み方 — 「トゥルーカウントがインデックス数以上なら、その行動を取る」。数値未満なら基本戦略どおり。負の数の場合も同じで、TC が −1 以上(−1, 0, +1…)なら実行する。以下は Hi-Lo・6デッキ・S17 前提。

最優先

まず覚える1つ

TC ≥ +3インシュランスを取る

インデックスプレイの中で単独で最も価値が高い。他のどの1手より期待値への寄与が大きく、判断も「アップカードがAのときだけ」と限定されるので実戦負荷も低い。逆に言えば、これ以外を1つも覚えなくても、これだけは覚える価値がある。

Illustrious 18

影響の大きい18手

影響度の大きい順。上から6つほどで、18個すべてを覚えた場合の効果の 8割前後に到達する。

#ハンドインデックスTC がインデックス以上のとき未満のとき
1インシュランスA+3取る取らない
2ハード16100スタンドヒット
3ハード1510+4スタンドヒット
410,105+5スプリットスタンド
510,106+4スプリットスタンド
6ハード1010+4ダブルヒット
7ハード123+2スタンドヒット
8ハード122+3スタンドヒット
9ハード11A+1ダブルヒット
10ハード92+1ダブルヒット
11ハード10A+4ダブルヒット
12ハード97+3ダブルヒット
13ハード169+5スタンドヒット
14ハード132−1スタンドヒット
15ハード1240スタンドヒット
16ハード125−2スタンドヒット
17ハード126−1スタンドヒット
18ハード133−2スタンドヒット

Fab 4

サレンダーのインデックス

レイトサレンダーが使える台でのみ意味を持つ4手。TC がインデックス以上ならサレンダーする。

ハンドインデックス未満のとき(基本戦略)
ハード1410+3ヒット
ハード15100サレンダー(基本戦略でも同じ)
ハード159+2ヒット
ハード15A+1ヒット(S17)/サレンダー(H17)

覚える順番

  1. インシュランス +3
  2. 16 対 10 が 0
  3. 15 対 10 が +4
  4. 12 対 3 が +2 / 12 対 2 が +3
  5. 10,10 対 5・6(+5 / +4)

ここまでで実用上ほぼ足りる。残りは高カウント時にしか発生しないか、頻度が低い。

注意点

  • インデックスはシステムとルールに紐づく。Hi-Lo 用の数値を KO や Omega II に流用してはいけない。
  • H17 台では 15 対 A・17 対 A まわりが変わる。
  • 10,10 のスプリットは非常に目立つ行動。実利は小さいので、ヒートを考えるなら見送る判断も合理的。
  • デッキ数が違うとインデックスもずれる。1〜2デッキ台では別表。

分散

優位より、揺れの方がずっと大きい

カウンティングで得られる優位はせいぜい 1%。一方、1ハンドあたりの標準偏差は約 1.15ユニット。つまりノイズが信号の100倍以上ある。資金管理とは、この揺れに飲み込まれて破産する前に長期の期待値が顕在化するまで生き延びるための設計のこと。

1.151ハンドの標準偏差(ユニット)
11.5100ハンドの標準偏差(ユニット)
≈1.31ハンドの分散

到達時間

N0 — 優位が揺れを追い越すまでのハンド数

N0 = 分散 ÷ 優位性²

期待利益が標準偏差と等しくなるまでのハンド数。「ここまでやって、ようやく実力と運が同じ大きさ」という地点であり、勝ちが保証される数ではない。

優位性N0(ハンド)実時間の目安
0.5%52,000約 700 時間
1.0%13,000約 180 時間
1.5%5,800約 80 時間
2.0%3,250約 45 時間

1時間あたり約70〜80ハンド(フルテーブル)で換算。1% の優位でも、実力が運を上回るのに180時間かかる。1回の旅行や1晩の結果は、優位の有無と何の関係もない。

ベットサイズ

ケリー基準

最適ベット = 資金 × 優位性 ÷ 分散

例: 資金100万円、優位1%、分散1.3 → 1万円 ÷ 1.3 ≒ 7,700円。これがフルケリー。実務では変動が激しすぎるため ハーフケリー(半分)にするのが一般的で、期待成長率は 3/4 に落ちる代わりに、資金が半減する確率が大きく下がる。

フルケリーでも、途中で資金が半分になる確率はおよそ 1/2。「破産はしないが、半分にはよくなる」水準だと理解しておく。

破産確率

必要なバンクロール

1ユニット固定・優位1%・分散1.3 でプレーし続けたときの破産確率(RoR ≒ exp(−2 × 優位 × 資金 ÷ 分散))。資金はユニット数。

バンクロール破産確率評価
100 ユニット21%5人に1人が飛ぶ。短期の遊びなら許容範囲だが、継続には向かない。
200 ユニット4.6%
300 ユニット1.0%一般に推奨される最低ライン。
500 ユニット0.05%実質的に破産しない。
スプレッドを使う場合、上の「ユニット」は最大ベットで数える。1:8 のスプレッドでミニマム1,000円(最大8,000円)なら、300ユニット = 240万円。ここが、カウンティングが「知識の問題」ではなく「資本の問題」である理由。

優位がない場合の資金管理

基本戦略のみ(=期待値マイナス)なら、どんな資金管理をしても長期の結果はマイナスに収束する。資金管理は損失を減らすのではなく、遅らせるだけ。この場合に意味があるのは「使ってよい金額を先に決め、それ以上は持ち込まない」という一点に尽きる。

時間あたりの期待値

1時間の期待値 = ハンド数 × 平均ベット × 優位性。100ハンド/時、平均ベット5,000円、優位1% なら 5,000円/時。この数字の周りを、標準偏差約6万円で毎時間振れる。1晩の勝ち負けが実力を語らないのはこのため。

コンプの扱い

ホテル・食事・リベートは実質的な収益。優位がわずかにマイナスでも、コンプ込みでプラスになる設計はあり得る。ただし高いベットを長時間打つことが条件になるため、分散は増える。

資金は分離する

生活資金と混ぜた時点で、正しいベットサイズを維持できなくなる。ケリー基準は「その資金を失っても意思決定が変わらない」ことが前提で、この前提が崩れると数式ごと無効になる。

テーブルで

ハンドシグナル

意思表示は手の動作で行うのが正式。天井カメラが記録しており、揉め事はこの映像で判定されるため、口頭だけでは不十分。シューゲーム(カード表向き)とピッチゲーム(カード裏向き・手に持つ)で作法が違う。

アクションシューゲーム(表向き)ピッチゲーム(手に持つ)
ヒット指でテーブルを軽く2回叩く、または手前に掻く動作。持っているカードでテーブルを軽く擦る。
スタンド手のひらを下にして、テーブルの上で水平に振る。カードをベットの下に差し込む。
ダブルベットのに同額のチップを置き、指を1本立てる。同上+カードを表向きに出す。
スプリットベットのに同額を置き、指を2本立てる(V字)。同上。
サレンダーテーブルにカードの後ろで横に一直線を引く動作+口頭で「サレンダー」。
ダブル/スプリットの追加チップは、必ず元のベットのに置く。上に重ねるとベットの増額(不正)と見なされる。カードが配られた後に元のベットに触れないこと。

作法

テーブルマナー

やること

  • 現金はディーラーに手渡さず、テーブルの上に置く。「チェンジ」と言えばチップに替えてくれる。
  • 着席はラウンドの切れ目で。カードが配られている最中に割り込まない。
  • チップは大きい額を下、小さい額を上に積む。
  • 席を外すときは「マーク(マーカー)お願いします」と伝えると席を確保してもらえる(時間制限あり)。
  • 写真撮影・携帯電話はテーブルでは基本的に禁止。

やらないこと

  • シューゲームでカードに触る(表向きに配られたカードは触らない)。
  • 他人のプレーに口を出す。特にサードベースの人を責めるのは最も嫌われる。
  • ベット確定後にチップを動かす。
  • 飲み物をテーブルのフェルト上に置く(専用のホルダーがある)。
  • ディーラーに「どうすればいい?」と聞き続ける。基本戦略カードを持ち込む方が確実で、多くのカジノで持ち込み自体は認められている。

位置づけ

法的な前提

  • 日本国内で金銭を賭けてブラックジャックを行うことは賭博罪(刑法185条)にあたる。国内でプレーできるのは、金銭の授受を伴わないアミューズメント(ノーレート)形式のみ。この資料は海外のカジノ、または金銭を賭けない場での知識として整理している。
  • 国内の統合型リゾート(IR)は法制度上は認められているが、施行状況は時期により変わるため、実際に行くときは最新の情報を確認する。
  • カウンティングは頭の中で数えているだけなので、それ自体は違法ではない。ただしカジノは私企業として入場拒否・退店要求・特定ゲームの禁止ができる。管轄によって扱いは異なる。
  • デバイス(機械・アプリ)を使ったカウントは多くの管轄で明確に違法。頭の中とデバイスの間に、法的には大きな線が引かれている。

オンラインカジノでカウントが効かない理由

通常のオンラインブラックジャック(RNG)は毎ハンドごとにシャッフルされるため、残りカードの偏りという概念自体が存在しない。ライブディーラー形式でも、多くはペネトレーションが50%程度と浅く、CSMを使う卓も多いため実用的な優位は生まれない。

基本戦略カードの持ち込み

多くのカジノでプラスチック製の基本戦略カードをテーブルに置いてよい。プレーが遅れない範囲であれば咎められないことがほとんど。記憶があいまいなまま打つより、見て正確に打つ方が確実に得

座る位置

期待値には影響しない。ただしサードベース(最後)は最も多くのカードを見てからアクションできるため、カウンティング時は情報が1周分多く手に入る。逆に他プレイヤーからの視線と責任も集まる。

練習の順序

基本戦略をノーミスで打てるようになる → ルール別の差分を入れる → Hi-Lo のランニングカウント(1デッキ25秒) → トゥルーカウント変換 → 上位インデックス数個。順番を飛ばすと、カウントしながら基本戦略を間違えるという最悪の状態になる